ワンセグ機能付き携帯電話しか持っていない世帯に、NHK受信契約の締結義務があるかどうかが争われていた裁判の控訴審で、東京高裁(深見敏正裁判長)は3月26日、「義務あり」とする判決を言い渡した。2016年8月の一審さいたま地裁判決は「義務なし」としており、ユーザー側の逆転敗訴となった。ユーザー側は上告する方針。
「ワンセグ訴訟」では5つの地裁判決(さいたま・水戸・千葉地裁松戸支部・大阪・東京)が出ている。今回のさいたま事件は、最初に判決が出た裁判で、唯一「義務なし」だったため結果が注目されていた。
このほか、大阪地裁の事件は「義務あり」で確定。水戸地裁と千葉地裁松戸支部の事件は3月22日にいずれも「義務あり」とする判決が東京高裁であった。東京事件は現在、高裁で争われている。
●放送法制定当時から「設置」には「携帯」も含むと判断
裁判では、「受信設備を設置した者」に契約義務があるとした放送法64条1項の解釈をめぐり、持ち運んで使う携帯電話が「設置」と言えるかどうかが争われていた。
一審のさいたま地裁は、受信料は税金に類するものと判断し、支払い対象を明確にする必要があると指摘。その上で、2009年の放送法改正で「設置」と「携帯」を区別した条文(2条14項)が追加されたことから、ワンセグ携帯は設置に当たらないと判断していた。
一方、今回の東京高裁判決は、放送法の歴史を振り返り、制定当時から「設置」は物理的に置くだけでなく、携行する場合も含めていたと指摘する。
具体例として、ラジオにも契約義務があるとしていた時代(〜1968年)は携帯ラジオからも受信料を徴収していたこと、2006年の衆議院総務委員会で総務大臣らがワンセグ携帯でも契約義務があると答弁していたことなどが挙げられている。さらに、物理的な設置に限れば、ポータブルテレビの場合、受信料を支払わなくて済むことになり、不公平を招くとも述べている。
また、一審では判断されなかった、ワンセグ携帯が受信契約の必要がない「放送の受信を目的としない受信設備」(放送法64条1項ただし書)に当たるかどうかにも言及があった。
ユーザー側は電話やネット機能を目的としているため、放送の受信を目的としていないと主張。これに対し、判決は設置者の主観的な目的ではなく、客観的に判断すべきとし、ワンセグ機能でテレビを視聴する人も「相当数いる」ことから、契約義務があるとした。
【12時40分:中見出し以下の判決内容を追記しました】