2018年02月22日 09時47分

なぜ人間は「猫」を殺してはいけないのか? ペット法学からみた「動物愛護」の課題

山下真史 山下真史
なぜ人間は「猫」を殺してはいけないのか? ペット法学からみた「動物愛護」の課題
渋谷寛弁護士

犬や猫など、愛護動物を殺したり、傷つけた人に対する厳罰化など、「動物愛護法」改正の気運が高まっている。ペットに関する法律と政策を研究する「ペット法学会」の事務局長をつとめる渋谷寛弁護士は、慎重な議論をもとめている。拙速な議論では、ペット業界だけでなく、国民の理解も得られにくいと考えているからだ。動物をめぐる法律のあり方・考え方について、渋谷弁護士に聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・山下真史)

●「国民の間で気運が高まっていない」

――法改正のポイントはなにか?

改正のポイントはたくさんあります。前回(2012年9月公布・2013年9月施行)の改正で、せめぎ合いの激しいところが残っています。

たとえば、厳罰化です。昨年、税理士による猫虐待事件が話題になりました。人間を複数殺した場合、死刑になることがあり、国民感情も「死刑で当たり前」です。しかし、生命を奪う行為でも、動物の場合は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」です。他人の飼い猫などの場合、器物損壊罪に問われることもありますが、それでも「3年以下の懲役・30万円以下の罰金もしくは科料」です。「3年以下の懲役」は、初犯だと、なかなか実刑にならないライン。まして社会的制裁を受けていると、執行猶予がつきます。

――現行の「7週齢」規制(生後7週間経たないと、子犬、子猫を親から引き離してはならないルール)を「8週齢」に伸ばそう、という議論については?

ペット業者の「営業の自由」を侵害することにならないような立法事実が必要です。科学的なデータのほかにも、国民感情も重要になってきます。ただ、動物愛護について、国民の間でそれほど気運が高まっているのか、個人的に疑問です。子犬・子猫から飼うのはよくない、と理解している人はまだまだ少ない。きちんと訴えていく必要もあるでしょう。

国会を無理に通しても、ペット業者から違憲訴訟を起こされたら大変です。「営業の自由」を侵害すると主張されたら、「違憲」という判断がされる可能性もあります。そうなれば、今までの運動の勢いが逆風にさらされます。「動物愛護団体つぶし」のような動きも出てくるおそれもあります。

●「子犬・子猫を衝動買いしてしまうことが間違っている」

――ペット業界の問題点は何と考えているか?

動物を繁殖するブリーダーの中には、「犬猫」を商品としてたくさんつくって、売ってしまえばいい、と考えている人も少なくありません。そういう中で、健康のよくない動物も生まれてくる。その場で処分されている動物がいるとしたら悲しいです。

――どうすればいいのか?

元も子もないのですが、結局は、消費者の意識が変わらないことにはどうしようもない。小さくてかわいい子犬・子猫を衝動買いしてしまうこと、それが、そもそも間違っています。きちんとした時期に親から離した子犬・子猫を買うという人が増えていく必要があるでしょう。そのためにも、ペット業界側に「8週齢」規制の導入を再検討してもらう必要があるでしょう。

●日本は「厳しいルール」がなじまない

――動物愛護法は「人と動物の共生する社会の実現」がうたわれています。根本的なところはどう考えればいいのか?

動物愛護法は、動物の「管理」と「愛護」からなりたっています。「管理」は端的にいえば、他人に迷惑かけないということ。「愛護」は、動物のためということです。そこから「終生飼養」、つまり、その動物が寿命をむかえるまでの一生涯、適切に飼うのが良いとされています。

一方、欧米の場合、病気の動物については、苦痛をあたえずに、安楽死させるという発想があります。命の捉え方に違いがあるのです。日本と欧米、どちらが人間中心的な考え方か、とはいえません。動物にアンケートをとることはできませんから。

人間は倫理・道徳の観点から、動物とどう接していくか、動物にとってどういうルールがいいのか、考えるわけですが、文化、時代、地域でも変わってくるでしょう。日本では、江戸時代の考え方と戦後の考え方が混在しています。

――日本の考え方はどういうものか?

日本には、仏教の「殺生禁断」、つまり、「生き物を殺してはいけない」という価値観があります。また、動物や昆虫にも生まれ変わる「輪廻転生」があるため、「なるべく生き物を殺さないようにする」という価値観もあります。そういう宗教的なものが根底にあるのです。

しかし、厳しいルールはなじみません。たとえば、江戸時代には「生類憐れみ令」がありました。しかし、厳しすぎたせいで、賛同を得られず、やがて撤廃されました。だから今でも、急な勢いで「動物愛護」を押し付けると、国民が反発してしまうおそれがあります。歴史から学ばないといけません。

●「人間はもっと動物のことを考えるべき」

――欧米はどういう考え方なのか?

欧米は、キリスト教の影響だと思いますが、「動物は、人間が支配・管理するもの」という考え方があります。だから、病気や重傷の動物には、苦痛をあたえず、安楽死させるところにいきつく。「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という考え方もあります。安楽死を多用するのは、「愛護」ではなく「福祉」です。日本でも「動物福祉」を主張する運動がありますが、「福祉」にすればなんでも解決するか、という問題が残っています。

――人間と動物が共生するためにはどうすればいいのか?

人間と動物が共存していくためには、人間はもっと動物のことを考えるべきです。

古代から、人間は、犬や猫をはじめとして、動物と暮らしてきました。食用・食料のために育てて、殺して、食べてきた。人間は武器を持ち、動物より強大なので、支配・従属関係がある。しかし、「地球上で人間は何をしてもいい」と決まっているわけではありません。

少なくとも動物が生きやすい環境は考えたほうがいい。散歩のときに、犬に服を着させるのは本当にいいのか、東京くらいの寒さだったら、死ぬわけではありません。服を着させて、犬が本当に喜んでいるんだったら、その飼主との関係でそれでいいんじゃないか、とも思います。動物のことを考えて、じっくり議論していくことが大事です。

(弁護士ドットコムニュース)

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この記事へのコメント

匿名ユーザー

多数のペットショップがある一方で、多数の捨て犬や捨て猫が殺処分される現状は「そもそもペットショップは必要か?」というペットショップの存在意義が問われているように思う。


そして、現在の愛玩動物は虐待や殺してはいけない。しかし他方で、食肉用家畜は平気で殺す。この両者には本来「命」という意味において何の違いもないのに、結局人間の都合による法律等により区分けされている。

あくまで、このような価値観は「人間最優先の価値観」という人間の身勝手から始まったという事を十分理解した上で、でも、それは人間社会で生きるためには仕方のない事、と割り切る必要がある。

その上で、犬や猫等のペットは、もはや「人間同様・家族同然」と考える飼い主は多く、その意味からも、その家族同然のものに対して被害があれば、人間に対するものと同様かそれに近い形で罰するべき、という考えになる事はある意味当然であると言える。

他方で、人間には「営業の自由」等、人権が保障されている。この「人間の営業の自由」と「家族同然のペットの命」と、「どちらを優先させるのかが今後問われるようになるのではないか」と私は考える。

当然ながらこれは、現状では「人間の営業の自由が優先される」という価値観である事は、言うまでもない。

しかし、先に述べたようにペットが「家族同然」と考える国民が増えてきた中で、「営業の自由がある程度制限されても命には直接関わらない」等という理由で「ペットの命を優先する」等というように、その価値観に今後変化が現れてくるかも知れない。

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匿名ユーザー 男性

なぜ豚や牛は殺していいのか?

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メリーさんのこひつじ 50代 女性

私達人間は動物や、植物の命のお陰で成り立っている。生きる為に必要だから。だから生きる為に必要ではない無益な殺生をしてはいけないんちゃいますか〜人として当然ですやん。

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匿名ユーザー

タイトル「なぜ人間は「猫」を殺してはいけないのか?」の答えが本文にあるのかと思ったら全然見当たらないし、法律家の観点から有益な情報が得られると期待したのですが既知のことばかりでちょっと残念でした。

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