7月25日夜、NHKで放送された東京都知事選の「政見放送」で、候補者の一人である後藤輝樹氏の音声の大部分が消去されて放送されるという異例の事態が起きた。後藤氏が、ニコ二コ生放送で公開した「ノーカット版」とされる映像と照らしあわせると、「ポコチン」や「キンタマ」などの性的な発言が消去されたようだ。
政見放送は公職選挙法150条によって、「録音し若しくは録画した政見をそのまま放送しなければならない」と定められており、原則として、内容を編集したり消去することが禁じられている。
なぜNHKは、音声を消去したのだろうか。弁護士ドットコムニュースがNHKに取材したところ、広報担当者は、「公職選挙法150条の2の規定をふまえて、過去の最高裁判決をもとに、東京都選挙管理委員会の見解も参考にした上で、削除をした。(後藤氏の発言が)放送禁止用語だったからという短絡的な理由ではない」と話した。
過去の最高裁判決とは、1983年の参院選に立候補した故・東郷健氏の政見放送で音声が一部削除され、同氏が音声削除を不服としてNHKを相手に起こした裁判だ。1990年に下された最高裁判決では、同氏が発した差別用語が、「他人の名誉を傷つけ善良な風俗を害する等政見放送としての品位を損なう言動を禁止した公職選挙法150条の2の規定に違反する」などとしてNHKの主張が認められ、同氏の敗訴が確定した。
●後藤氏「明らかに憲法違反です」
後藤氏は7月26日付けのブログで、政見放送の大部分が消去されて放送されたことについて、次のように不服を述べた。「自分の人生懸けて、命を懸けて、この都知事選という大一番の局面に『ポコチンの時間』をぶつけてきた訳ですよ、僕は。それを、あそこまで、修正、カットするかね。大人は。ポコチンくらい言わせろよ、バカやろうと思います」。また、「政見放送は、候補者が自由に言論等を表現する場。明らかに憲法違反です」とも述べた。
一方で、「NHKや東京都選挙管理委員会とも色々やりあいましたけど、彼らには彼らの立場や常識というものがあり、ご迷惑をおかけしたと思います。申し訳ございませんでした」と謝罪。ツイッターでは、「でも消去されて却って面白くなったかもしれない」とつぶやいていた。