「ポケモンGO」に興じる人たちが街なかにあふれている。7月22日の配信後、最初の土日には、レアなポケモンのキャラクターが出現しやすいとされる場所に人だかりができた。
こうした状況のなかで、現役のラブホテルスタッフが書いたブログ「ラブホの上野の休憩中」が話題になっている。ブログは、ポケモンGOは「『人の行動』『人の移動』を操作、管理する力がある。そしてそれはお店を潰すことも、人を狂わせることもできる」と指摘している。
また、もしラブホ近くに、人気のポケモンや珍しいアイテムが配置されたらどうなるのか、という問題提起をしており、「人が入り口付近に集まっているホテルを利用したいと思うお客様はいらっしゃらない」「もしラブホテル街に『お客様ではない方』が集まってしまったら、我々の仕事は崩壊しかねません」と懸念を示している。
弁護士ドットコムニュースの記者が7月25日夜、東京・鶯谷のラブホテル街を歩いたところ、ホテル前のモニュメントがアイテムを入手できる「ポケストップ」とされていることを確認した。ポケモンが出現しやすくなる「ルアーモジュール」が使われているところもあったが、一組の男女カップルはそのホテルに吸い込まれるように入っていった。
たしかに、ラブホテルの前にポケモンGOユーザーが群がってしまうと、人目をはばかって利用したい客がやって来なくなるという事態も起こりうるだろう。もし仮に、そのようなことが起きた場合、法的な問題はないのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。
●「業務妨害罪」は成立するのか?
「結論からいうと、店舗側は、ポケモンを探したり、『ポケストップ』に集まってきた人たちに対して法的対応をとるのは難しいけれど、事情や状況などによって、運営会社に対してはとれるケースがあると思います」
冨本弁護士はこのように述べる。どういうことだろうか。
「刑法の業務妨害罪は、事業者の営業上の利益を保護するための罪です。たとえば、ホテル前などで騒ぎを起こして、客が入らないようにすれば、業務妨害罪が成立します。
なので、ポケモンやアイテムを求めて集まっている人たちが、営業の邪魔になるとわかって、わざとやるのであれば、業務妨害罪になる可能性があります。
しかし、たとえば、ポケモンとアイテムをゲットして、すぐにその場を離れるならば、店舗の業務を妨害しているとまではいえません。また、『ルアーモジュール』が設置されている場合などでも、自分の行為が営業妨害だと認識していないケースがほとんどだろうと考えます。
要するに、営業妨害の程度が、犯罪といえる程度にまで至っていないと思います」
では、運営会社はどうだろうか。
「運営会社も、営業妨害になるとわかって、ホテル付近にポケモンやポケストップを設置するようなこともしないでしょうから、原則として、業務妨害罪は成立しないと考えます。
ただし、ホテル側から営業妨害になっているとのクレームを受けて、店舗近辺からポケモンやポケストップを外すことが簡単であるにもかかわらず、そのまま放置して、長時間ポケモンやアイテムを求める人が多く押し寄せる状況をつくりだしていれば、営業を妨害する危険性も大きいでしょう。
そのような場合、業務妨害罪が成立する可能性もあります。店舗側が、営業妨害によってこうむった損害について、賠償請求することも考えられます。
いずれにせよ、マナーと安全に注意しながら遊んでほしいです」
冨本弁護士はこのように述べていた。