16歳未満の子どもによるSNS利用を法律で禁止すべきだ──。
子どものSNS依存や犯罪被害などが深刻化しているとして、医師や研究者、教育関係者らでつくる「子どもをSNS被害から守る会」は10月30日、16歳未満のSNS利用を禁止する法律の制定を求める要望書をこども家庭庁に提出した。
要望書では、利用を禁止するだけでなく、SNS事業者に対して、依存を誘発するとされる「無限スクロール」や「自動再生」などの機能の制限を義務付けることも求めている。
海外では、オーストラリアが16歳未満のSNS利用を制限する法律を施行するなど、子どものSNS利用に年齢制限を設ける動きが各国に広がっている。
●「無限スクロール」「自動再生」の制限も求める
要望書で求めているのは、大きく3点だ。
1つ目は、16歳未満(中学生まで)のSNS利用を禁止する法律の制定だ。
思春期の子どもはSNSの「報酬系刺激」に敏感で、依存に陥りやすく、悪影響を十分に認識しないまま利用する傾向があるとして、中学校を卒業するまでは国が責任を持って保護する必要があるとうったえている。
2つ目は、SNSを運営する企業に対し、「子どもに安全な設計」を法律で義務付けることだ。
具体的には、利用時間の制限や年齢確認の強化に加え、無限スクロールや自動再生、過度な「おすすめ」表示、通知、ランキングなど、依存を誘発するとされる機能の制限を想定している。
さらに、有害コンテンツからの保護、保護者による管理機能の強化、若年層を対象とした広告の規制、AIによるリスクへの対応なども求めている。
3つ目は、国が主導して精度の高い年齢確認の仕組みを構築することだ。
SNS事業者に年齢確認を任せるだけでは、年齢を偽るなどして規制をすり抜けることができるとして、公的な仕組みを整備する必要があると訴えている。
同会は、こうした規制について、子どもや保護者を罰することが目的ではなく、SNS事業者に安全対策を義務付けることが中心だと強調している。
●SNSで「痩せる」情報を見た女子高生、マンジャロに手を出し…
同日、東京・霞が関の厚労省で開かれた記者会見では、子どものSNS依存や被害の実態も語られた。
同会の共同代表であり、NPO法人「子どもとメディア」代表理事の山田眞理子さんは、精神科クリニックのメディア依存外来に15年間携わってきた。
山田さんによると、かつて依存外来を受診するのは大学生が中心だったが、次第に低年齢化し、現在は小学生が初診で訪れるケースも多いという。
依存の対象も変わってきた。当初はゲームがほとんどだったが、YouTubeやTikTokなどの動画サービス、さらに不特定多数の人とつながるSNSへと広がっているという。
山田さんがSNSの危険性を示す事例として紹介したのが、ある女子高生のケースだ。
この女子高生は、SNSで「痩せる」ための情報を見ていたところ、糖尿病治療薬を処方してくれる医療機関を紹介する投稿が流れてきたという。
実際にその医療機関を受診し、糖尿病治療薬「マンジャロ」を使うようになった。しかし、自由診療のため薬の費用がかさみ、やがてお金が足りなくなった。
そこで女子高生はキャバクラで働くようになったという。
●「自己責任」で片付けず、子どもが安全に学べる環境を
同会の共同代表で、元弘前大学教授の大谷良光さんによると、今回の要望書には最終的に1024人が賛同したという。
大谷さんは、子どもがSNSで被害に遭っても「自己責任」で片付けるのではなく、SNS事業者に安全なサービス設計を義務付ける必要があると強調した。
一方、同会は、中学生まではSNSを禁止し、高校生になった途端に自由に利用させればよいと考えているわけではない。
中学生までは安全な環境でメディアリテラシーを学び、高校生になれば実際にSNSを利用しながら学んでいく。そうした段階的な仕組みが必要だとしている。
同会は今回の要望書とは別に、11月末までオンライン署名も募っており、今後、こども家庭庁に提出する予定だ。