夫婦同姓を義務づけた民法や戸籍法の規定は憲法に違反しないとした今年6月の最高裁大法廷決定に対して、都内の事実婚夫婦が再審(裁判のやり直し)を申し立てていたが、最高裁第三小法廷は申し立てを棄却した。9月17日付。
夫婦の代理人である「第二次夫婦別姓訴訟」弁護団の有志が9月22日、弁護士ドットコムニュースに明らかにした。
弁護団の有志は、「今回も最高裁から、『国民に伝わる言葉』での説明は一切されませんでした」と批判している。
●「憲法14条1項違反」を判断しなかった最高裁
事実婚夫婦らは、夫婦同姓を求める民法の規定によって、法律婚夫婦にだけ与えられている法的権利や利益を享受することができないとして、「法の下の平等」を定めた憲法14条1項に違反するなどと主張してきた。
しかし、今年6月の最高裁決定は、「単なる法令違反を主張するもの、またはその前提を欠くもの」としたため、夫婦は、最高裁の決定は判決に影響を及ぼす重要な争点が判断されていなかった(判断の遺脱があった)として、再審を求めていた。
「第二次夫婦別姓訴訟」弁護団の有志では今後、第三次夫婦別姓訴訟を検討していくことを明らかにしている。
●「わずか2行」だった棄却理由
弁護団の有志は、弁護士ドットコムニュースに次のようにコメントした。
「本年7月26日に憲法14条論の関連で行った再審申し立てについて、最高裁第三小法廷から決定文を受領しました。結論は棄却で、その理由は『本件申し立てについては、上記対象事件の決定に所論の民訴法338条1項所定の再審事由があるものとは認められない』という、わずか2行のみでした。
本申し立ては、国会等でのやり取りも含め、『国民に伝わる言葉』での説明がおろそかにされている昨今の風潮に一石を投じる趣旨で行ったものですが、今回も最高裁から、『国民に伝わる言葉』での説明は一切なされませんでした。
司法の重要な役割の1つに、憲法、法律等から導かれる法論理に基づく、敗訴当事者・国民に対する説得機能があると言われますが、本件の大法廷決定及び今回の決定には何らの『論理』もなく、敗訴当事者・国民に対する説得の要素は皆無です。
最高裁長官は2018年の就任時に、『身近な存在として国民からより信頼される裁判所の実現、ひいては法の支配を揺るぎなきものとするために全力を傾けたい』と決意を語っていました。
今回の申し立てを踏まえ、最高裁には、国民にわかりやすい言葉で説明を尽くすことが、『裁判を受ける権利』を実質的にも保障し、国民の信頼に値する機関であり続けるために必須であることを再認識の上、『少数者の人権の最後の砦』としての役割をきちんと果たしていくことを、強く期待したいと思います」