冤罪の被害者を救うための法制度を求める集会が10月7日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で開かれ、被害者や遺族が「早急に法律を改正して、冤罪で苦しんでいる我々を救ってほしい」とうったえた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●冤罪被害者を救えない「再審法」の現状
「再審」とは、刑が確定したあとに裁判のやり直しを求める手続きのこと。特別な「再審法」という法律があるわけではなく、刑事訴訟法に定められた計19の関係条文をまとめてそう呼ばれている。
しかし、再審制度は規定が不十分で、再審開始までに極めて長い時間を要するなどの問題が指摘されている。それにもかかわらず、70年以上にわたり改正されておらず、「無実の人を救えない」と批判され続けている。
実際、死刑を言い渡された袴田巌さんは再審で無罪となるまでに半世紀かかった。無実を知らないまま亡くなった冤罪被害者もいるとされる。
●前川さん「再審法改正で世の中変わる」
この日の集会には、1966年の「袴田事件」で死刑が確定したあと、約40年を経て再審開始が決まった袴田巌さんの姉、ひで子さんや、違法な捜査による冤罪事件に巻き込まれた「大川原化工機」の元顧問、故・相嶋静夫さんの長男などが出席した。
また、1986年に福井市で起きた女子中学生殺人事件で、服役後に無罪が確定した前川彰司さんも登壇。自身の再審請求をめぐって、2011年に再審開始決定が一度出たにもかかわらず、検察側が不服申立てをしたことで、無罪確定までの時間が延びた経緯を語った。
再審開始の決定を出した名古屋高裁金沢支部は、検察側が前川さんに有利な証拠を隠していたことなどを批判している。
前川さんは「再審法を変えれば世の中変わる。救済が早まれば、獄中の人もそれだけ早く救われます。早急に法律を改正して、冤罪で苦しんでいる我々を救ってほしい」と語気を強めた。
●議員立法による法改正を求める声強く
こうした状況の中、2024年3月には、超党派の国会議員による「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟(議連)」が発足。
先の国会で、捜査機関の証拠を再審請求する側が開示請求できる制度の整備や、裁判所がやり直しを命じた場合に検察側の不服申し立てを禁止することなどを盛り込んだ改正案が提出されたが、採決は見送られた。
今年に入り、鈴木馨祐法務大臣が「法制審議会」に証拠開示のあり方などを検討するよう諮問。与党内では「法制審の議論を待つべき」との声が上がっているが、法務省の幹部の多くが検察官出身者で占められていることから、骨抜きにされるという懸念が強い。
このため、議連や日本弁護士連合会などは議員立法による法改正の必要性を強調している。
集会では、国会議員や弁護士から「法制審では冤罪被害者のヒアリングがあまりにも短すぎ、審議に十分反映されていない」「少数の人たちの人生を賭けた思いに国民のみなさんに心を寄せてほしい」といった声が上がった。