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"記者クラブ"を訴えたフリー記者が敗訴「時代に逆行する」、鹿児島県知事の会見取材拒否めぐり…東京地裁
判決後に記者会見を開いたジャーナリストの寺澤さん(左)と三宅さん(2025年6月30日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)

"記者クラブ"を訴えたフリー記者が敗訴「時代に逆行する」、鹿児島県知事の会見取材拒否めぐり…東京地裁

記者クラブに加盟する記者に取材を妨害されたとして、フリージャーナリスト2人が共同通信社とその記者を相手取り損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は6月30日、請求を棄却した。判決後、原告は「時代に逆行する判決だ」として、控訴する方針を示した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●鹿児島県知事の就任会見を取材できず

原告はフリージャーナリストの寺澤有さんと三宅勝久さん。判決文などによると、2人は2020年7月28日、鹿児島県知事に就任する塩田康一氏の記者会見を取材するため、会見が開かれる鹿児島県庁の大会議室に入ろうとした際、鹿児島県政記者クラブ「青潮会(せいちょうかい)」に加盟する報道各社の記者に阻止された。

これについて、2人は「任意団体にすぎない青潮会に、公共施設である鹿児島県庁の会議室で記者会見を主催し、フリーのジャーナリストを排除する法的権限はない」などと主張。

当時、青潮会の幹事社をつとめていた共同通信社とその記者2人を相手取って、不法行為や使用者責任に基づいて計約220万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

●共同通信「事前に所定の手続きがない参加を拒むことに違法性はない」と主張

主な争点は(1)原告を会見場に入れさせなかった共同通信の記者2人の不法行為責任の有無、(2)共同通信の使用者責任の有無──に絞られた。

青潮会は2020年7月21日に改訂した「青潮会主催の記者会見に関する規約」で、非加盟の記者でも「記者としての実績を有する者」などについて「青潮会幹事社を通じて事前申請して認められた者は参加できる」と定めていた。

この規約について、原告側は裁判で「新知事の就任記者会見という広く公開されるべき性質の会見であるにもかかわらず、青潮会の内部で勝手に決めた規約等に反するという理由で、第三者である原告らの取材を妨害することは、憲法21条1項が保障する報道の自由、取材の自由からして、到底認められるべきではない」などと主張した。

一方、被告側は「記者会見を青潮会が主催していることは明らか」「規約の事前申請の要件は、申請者の参加の可否を青潮会内部で協議し、参加人数を収容できる会場の確保や円滑な運営を担保するため」「事前に所定の参加手続きをおこなっていない原告らの記者会見の参加を拒むことについて違法性は認められない」などと反論した。

●東京地裁「事前申請を求めることが不当とは言い難い」

東京地裁の衣斐瑞穂裁判長はこの日の判決で、記者会見の主催者について「鹿児島県の広報担当の部局が、記者会見は青潮会が主催し、県知事はその要請を受けて参加している旨を対外的に説明している」点などを挙げ、「記者会見を主催したのは青潮会であると認められる」と判断した。

そのうえで取材妨害行為について「規約に基づく事前申請を求めること自体がおよそ不当なものであるとは言い難い」「手続き的要件を欠くことを理由に記者会見への参加を拒否することについても記者会見の秩序維持等の観点から必要なものと評価し得る」などとして、不法行為の成立を否定した。

●原告「我々を排除する目的だったのは明らか」

この日の判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いたジャーナリストの三宅さんは「時代に逆行するというか、社会が進歩することを拒絶したかのような判決。社会的な意義がわかっていない」と批判した。

これまで記者クラブ制度の問題を追及し続けてきた寺澤さんは「(被告らの行為が)我々を排除する目的だったのは明らか。今回の判決は、いくら裁判所が記者クラブ制度によって立っているとはいえ、杜撰な内容だ」と述べ、控訴する意向を示した。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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