警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認定し、国と東京都に計1億6600万円あまりを支払うよう命じた5月28日の東京高裁の判決を受け、この冤罪事件に巻き込まれた大川原化工機の弁護団が5月29日、国と東京都に上告しないことや違法行為に関わった捜査員らへの厳正な処分を求める活動をオンライン署名サイト「Change.org」(チェンジ・ドット・オーグ)で始めた。
1日もたたずに2000筆以上が集まっており、弁護団は「1、2審ともに違法捜査を認めている以上、税金を使って訴訟を続けることは許されない」とさらなる賛同を呼びかけている。
●第三者委員会による調査、関わった捜査員らの処罰も要望
大川原化工機の冤罪事件では、生物兵器に転用可能な機械を中国や韓国に不正に輸出したとして、同社の社長ら3人が2020年に逮捕、起訴されたが、2021年に起訴が取り消された。
その間3人は保釈を何度も求めたが、裁判所に却下され続け、元顧問だった相嶋静夫さんは勾留中に体調を崩し、無実が認められたことを知ることなくこの世を去った。
社長らは違法な捜査があったとして国や東京都を訴え、控訴審の東京高裁は5月28日、警視庁公安部が今回の事件を作り出したと事実上認める判断を下した。
そこで弁護団は、東京都と国に対して以下の3点を求めてネット上の署名活動を開始。「警視庁、検察庁の暴走を止めるためには、あなたの力が必要です」とうったえている。
(1)警視庁(東京都)と検察庁(国)は東京高等裁判所の判決を受け入れ、最高裁判所への上告をしないでください。 (2)速やかに第三者委員会を設置し、今回の冤罪事件の真相を解明してください。 (3)捜査員らが行った違法行為については厳正な処罰を求めます。
大川原化工機の冤罪事件の経緯をまとめた表(弁護士ドットコムニュース作成)
●「悪いことをしていないのになぜ醜い目に遭わなければ…」
署名活動を呼びかけるにあたって、亡くなった相嶋さんの遺族は次のようなコメントを出した。
<父は無実であるにもかかわらず、逮捕・勾留され、がんと診断されても迅速に治療を受けることができませんでした。 何も悪いことをしていないのに、なぜこのような酷い目に遭わされなければならなかったのでしょうか。 経済安全保障の重要性が増している状況であるからこそ、捜査は適正に行われなければなりません。 警視庁、検察庁には、違法捜査がなぜ行われたのか、再発防止に何が必要なのか、自ら厳しく検証を行っていただきたいのです。 父と同じような目に遭う人が二度と現れないようにしなければなりません>