「その名担いて グラウンドを照らすプレイのたくましさ」ーー。プロ野球読売ジャイアンツの球団歌「闘魂こめて」の一節だ。
「八百長プレイで グラウンドを汚すプレイの恥ずかしさ」ーー。そしてこれが「闘魂込めて」の替え歌として広まっている歌詞の内容。その名も「商魂こめて」だ。
近年、一部の心ないファンにより侮辱的な内容の応援歌がスタンドで歌われている。
特にジャイアンツの長年のライバル球団である阪神タイガースのファンは応援が攻撃的になる傾向が強く、他球団への侮辱的な替え歌や選手への誹謗中傷を減らすため、球団が毎年OBによる注意喚起の動画を作るなど対策をとっている。
それでも、4月4日に東京ドームで行われた巨人対阪神の今シーズン開幕戦でも、この侮辱的な替え歌が歌われ、その様子がSNSにアップされた。
侮辱的な替え歌を歌う行為に問題はないのか。スポーツ法務に詳しい田原洋太弁護士に聞いた。
●内容によっては侮辱罪等に該当する可能性も
まず、民事責任としては、特定の選手に対して侮辱的な応援歌を歌うことにより、選手の社会的評価を低下させたり、社会通念上許容される限度を超えていた場合には、名誉毀損または侮辱であるとして不法行為(民法709条)に該当し損害賠償義務を負う可能性があります。
また、大人数で行った場合には連帯して損害賠償義務を負う可能性があります(民法719条)。
刑事責任としても、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)に該当する可能性はあります。また、何らかの危害を加える内容であれば脅迫罪(刑法第222条)に該当する可能性があります。
●悪質な観客には出禁も検討
侮辱的な応援に対して、球団等の主催者ができる対策としては、試合観戦に関する約款、規約に基づいて、侮辱的な応援をした人を退場させる又は入場を禁止することが考えられます。
例えば、プロ野球ではNPBの試合観戦契約約款第8条1項6号において、禁止行為として「他の観客及び監督、コーチ、選手、主催者及びその職員等、販売店その他の球場関係者への威嚇、作為又は不作為の強要、暴力、誹謗中傷その他の迷惑を及ぼす行為」を定めています。
また、同第10条1項4号において、禁止行為に該当した場合には退場させることができる旨を規定しています。これらの規定により対応することが考えられます。
●選手だって人間、誹謗中傷には「恐怖を感じる」
応援における「叱咤激励」と「誹謗中傷」、「ヤジ」と「声援」の線引きはケースバイケースになると思います。
プレーに関する批評であれば叱咤激励といえることが多いと思いますが、人格攻撃や脅迫のような言動は誹謗中傷に当たり許されないと思います。
スポーツ観戦に熱中し、言葉が荒っぽくなってしまう人もいると思いますが、プロスポーツ選手も誹謗中傷を受けたら私たちと同じように傷つき、恐怖を感じます。
自分が言っていること、言おうとしていることを、自分の友人や家族にも同じように言えるのか、一度冷静になって考えてみるということも大事かと思います。