「姓名判断してみたら、改名の必要があると言われた」「姓名判断の結果が悪すぎて泣けてきた。大凶のオンパレード」。ネット上には、姓名判断の結果が悪く、ショックを受けているという投稿がみられる。
中には、真剣に改名を考えている人たちもいる。弁護士ドットコムにも「姓名判断の結果が悪く、名前を変更したいと考えています。裁判所に認めてもらえるのでしょうか」という相談が寄せられている。
相談者は、過去に姓名判断をした際に結果が悪かったため、名前の変更をすすめられた。そのときは「名前の変更は簡単にできないのではないか」などと思い、改名を諦めていたが、その後、原因不明の病にかかってしまったという。
名前を変えなかったことと関係あるのではないかと考えた相談者は、意を決して改名することにした。
●名前を変えるにはどうすればよい?
改名には(1)名の漢字(文字表記)は変更せずに、読み方だけを変える場合、(2)名の漢字(文字表記)を変更する場合、の2つのパターンがある。
(1)名の漢字(文字表記)は変更せずに、読み方だけを変える場合は、比較的簡単におこなえる。
戸籍には、氏名の漢字(文字表記)が記載されており、読み仮名については記載されていないため、読み方を変えることは自由にできる。ただ、住民票には読み仮名が記載されている自治体が多い。そのため、市町村役場で「住民票ふりがな修正申出書」を届け出ることで、必要な手続は完了となる。
(2)名の漢字(文字表記)を変更する場合は、家庭裁判所の許可が必要だ。改名をするには、住所地(住民票がある市区町村)を管轄する家庭裁判所に以下の書類を提出し、申し立てることになる。
・名の変更許可申立書
・発行から3か月以内の戸籍謄本(全部事項証明書)
・名の変更が必要な理由を証明する資料(具体的には、通称を使用して出した年賀状など)
家庭裁判所に申立てが受理されると、次の段階として書面で事情を照会されたり、裁判所に呼ばれて直接事情を聞かれたりすることが一般的だ。
申立てに必要な費用は、申立書に貼付する収入印紙800円分と連絡用の郵便切手数枚。 改名を希望する申立人が未成年者であっても、15歳以上であれば、親の代理や同意なしに申立てをおこなうことができる。
●「姓名判断の結果が悪かった」ことは「正当な事由」にあたる?
ただ、名の漢字(文字表記)を変更するには、「正当な事由」が必要だ。戸籍法では、正当な事由によって、戸籍の名を変更するには、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならないとされている(107条の2)。
正当な事由とは、改名をしないとその人の社会生活において支障を来す場合をいうとされ、単なる個人的な趣味や感情等のみでは裁判所は名の変更を許可しないといわれている。 正当な事由の具体例としては以下のようなものがある。
(1)営業上の目的で襲名を行うとき
(2)親族に同姓同名者がいるとき
(3)珍奇・難解・難読で社会生活上著しく支障があるとき
(4)日本に帰化した者が日本風に名前を改める必要があるとき
(5)長期間にわたり通称名を使用している場合(いわゆる「永年使用」)
実際にどういった名前でどういった支障が生じていれば改名が認められるのかは、申立ての事案ごとに個別に判断され、審判官の価値観にも左右されるという。
では、今回のケースのように、姓名判断の結果が悪かったという事情は「正当な事由」にあたるのだろうか。浮田美穂弁護士は、次のように説明する。
「『姓名判断の結果が悪かった』という理由だけでは、戸籍法107条の2の『正当な事由』にあたらないとされています(昭和52年10月25日東京高裁決定)。
しかし、姓名判断に基づいて戸籍上の名とは異なる通称名を永年にわたって使用し、今更これを戸籍上の呼称に変更するとかえって社会生活上著しい支障を生ずると認められる場合 には、改名を許可するのが相当とされています」
姓名判断の結果が悪く、どうしても名前を変えたい場合は、自分で決めた通称名を使い続ける必要があるだろう。