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マンション住民から苦情→管理規約で禁止→判決で差し止め…「民泊」の試練つづく?
画像はイメージです(Fast&Slow/PIXTA)

マンション住民から苦情→管理規約で禁止→判決で差し止め…「民泊」の試練つづく?

東京都港区のマンションで「民泊」を営業していた男性に対して、管理組合が差し止めを求めた訴訟で、東京地裁は8月上旬、マンションの管理規約に違反していると認めて、民泊の差し止めと弁護士費用の支払いを命じる判決を言い渡した。

報道によると、神奈川県在住の男性は2015年10月、港区にあるマンションの一室を購入した。民泊予約サイト「Airbnb」を通じて、外国人の家族連れなどを泊まらせていた。しかし、宿泊客が夜間、バルコニーで話したり、ゴミを分別せずに捨てたりするなどして、住民から苦情が出るようになった。

マンションの管理組合は2016年4月、管理規約を改正して、不特定の人が宿泊する施設として部屋を使うことを禁止した。ところが、そのあとも、民泊予約サイトで、利用者の感想が更新される状態がつづくなどしたため、管理組合は2017年6月、提訴に踏み切ったということだ。

●「違法民泊に悩まされている管理組合は、法的な手続きをとりやすくなる」

今回の判決では、管理規約違反が認定された。改正後の管理規約で新しく設けた違約金規定に基づいて、弁護士費用の支払いも命じられた。住宅宿泊事業法(民泊新法)によって、民泊が解禁されたのに、どうして差し止められるのだろうか。民泊問題にくわしい中島宏樹弁護士が解説する。

「いわゆる民泊新法によって、年間180日を上限として、既存の住宅(台所、お風呂、トイレなどの設備があるもの)で民泊営業をおこなうことができるようになりました。ただし、マンションについては、管理規約で禁止されていないことが必要となります」(中島弁護士)

問題となったマンションでは、民泊を禁止するために、管理規約が改正されていることから、それを根拠として、民泊営業が差し止められることになった。今回の判決はどんな影響があるのだろうか。

「たとえ管理規約で民泊行為を禁止する前に民泊営業をはじめていたとしても、あとから、管理規約が改正された場合、民泊営業を継続することはできないと判示されています。弁護士費用の支払いも命じられています。違法民泊に悩まされている管理組合は、法的な手続きが取りやすくなると思います」(中島弁護士)

●「トラブルの背景には、宿泊客と住民の相互不理解がある」

外国人観光客の増加を背景として、民泊の需要が高まっている。一方で、住民とのトラブルもあとを絶たない。今回のケースでは、宿泊客のマナーの悪さがきっかけとなって、住民から苦情が出てしまい、そのあとで管理規約が改正された。

「最低限、周辺住民に迷惑をかけない運営体制をつくることが、民泊の健全発展にもとめられます。トラブルの背景には、宿泊客と住民の相互不理解があると思います。民泊が、宿泊客と住民が交流しながら、相互理解を深める場となることを望んでいます」(中島弁護士)

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中島 宏樹
中島 宏樹(なかじま ひろき)弁護士 中島宏樹法律事務所
京都弁護士会所属。弁護士法人大江橋法律事務所、法テラス広島法律事務所、弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所を経て、平成30年7月、中島宏樹法律事務所を開設。民暴・非弁取締委員会(委員長)、弁護士法23条照会審査室、日本弁護士連合会「貧困問題対策本部」委員。

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