引越しには、何かと出費がつきもの。だからこそ、引き払う賃貸マンションの敷金は、できれば全額返ってきてほしいところだ。しかし世の中には、「予想以上のリフォーム代が敷金から差し引かれていた」というケースもあるようだ。
インターネットのQ&Aサイトにも、「4年間住んでいた賃貸マンションから引っ越す際に、敷金からリフォーム代として17万円も差し引かれた」という事例があった。その内訳は、フローリングやクロスの張り替え費用、畳の交換代、部屋のクリーニング代などにおよんだという。
たしかに、何年も同じ部屋を住んでいたら、多少の傷みが出るかもしれない。しかし、なんでもかんでもリフォーム代や修理代として請求されたら、たまったものではない。では、敷金から「過剰」にリフォーム代が引かれていると思ったら、借り主はどうすればよいのだろうか。また、どんなリフォーム代や修理代なら、「負担してもやむなし」なのだろうか。波多野進弁護士に聞いた。
●「自然な劣化」なら、敷金は取り戻せる
「もし、特に壊したものなどがないのに、『リフォーム代』などの名目で敷金が返ってこない場合、原則として、貸し主に返還を求めることができるでしょう」
このように波多野弁護士は説明する。どうやら、「経年劣化」くらいの痛みなら、敷金は取り戻せそうだ。なぜ、そう言えるのか。
「何年か普通に居住しているだけでも、畳やクロスなどが傷むのは当然ですよね。住宅の賃貸借契約では、多少の傷みは想定の範囲内だと言えます。多くの判例では、時の経過や通常の使用で自然に傷んだ『自然損耗』分は、貸し主の負担としています。
したがって、借りた人が、修繕の費用を負担しなければならないのは、その人自身の故意または過失で、壊したりしたものだけです」
●「住む前」と「住んだ後」の写真を撮っておこう
もちろん、借りた部屋を大事に使うのは当たり前のことだ。しかし、たとえば床の傷をどこまで「経年劣化」とするか、判断が難しい場合もあるだろう。
「いずれにせよ紛争を予防するためにも、貸し主も借り主も、居住する前と明け渡した後の部屋の状態をデジカメなどで記録しておくことをおすすめします」
波多野弁護士は、敷金トラブルを防ぐ一番の安全策を教えてくれた。