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現金は公衆トイレへ…特殊詐欺犯のスマホに残された衝撃写真、"逃亡者の楽園”フィリピンの実態
実際の札束の写真

現金は公衆トイレへ…特殊詐欺犯のスマホに残された衝撃写真、"逃亡者の楽園”フィリピンの実態

急速に拡大し続ける匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウの犯罪。その多くが不特定の人から現金を騙し取る特殊詐欺だが、詐欺師たちに欠かせないのがスマートフォンだ。

今回、筆者は海外で逮捕された特殊詐欺犯(かけ子)のスマホに入っていた写真データを現地の入国管理局関係者から入手した。膨大な写真データから見えてきたのは、海外で旅行や買い物を楽しみながら生活している実態だった。

特殊詐欺に以前関わったことがある人物はこううそぶく。

「普通にしていれば不法滞在でも決して捕まりません。警察と話すことだって問題ありません」

さらに、かけ子のスマホからは、犯罪収益金の「運搬ルート」も明らかになった。騙し取られた金が、どう運ばれ、海外の詐欺師の手元に渡るのか──。

2年以上にわたり特殊詐欺組織を追いかけてきた筆者が、詐欺師のスマホから最新の犯罪事情に迫る。(ジャーナリスト・竹輪次郎)

●「JPドラゴン」残党が逮捕される

今年10月、フィリピンの田舎町で特殊詐欺に関わっていた男女6人が逮捕された。グループは女A(34)がリーダーで、女B(33)、男C(48)、男D(33)、男E(45)、男F(53)がいた。フィリピン入管は、このグループをフィリピン在住の日本人犯罪組織「JPドラゴン」の残党だと発表した。

JPドラゴンとは、吉岡竜司をリーダーとする組織とされ、吉岡は今年6月、潜伏先で逮捕されて、現在はフィリピンの外国人収容施設で拘束されている。

Aらは50平米ほどの決して大きくない一軒家に集まり、詐欺の電話をかけていた。部屋からは「りすと」と書かれた名簿が押収されている。住所や氏名、電話番号のほか、入管が撮影した映像からは家族構成らしき走り書きも確認できた。

また、大量のSIMカードも見つかった。フィリピンではSIMカード購入に身分証明書が必要なため、不法滞在の日本人は購入できず、協力者のフィリピン人が代わりに買っていたという。

SIMカード購入を担っていたフィリピン人男性はこう語る。

「買う時はいつも大量で、2週間〜1カ月に一度、50〜100枚ほど発注されました。少しでも疑われたら、そのSIMは捨ててしまうようです。電話番号から居場所を特定される可能性があると言っていました」

Aらのグループは、遅くとも2023年春ころに「JPドラゴン」から分裂し、フィリピンの田舎町で潜伏しながら特殊詐欺を続けていたとみられる。今年10月、ついに潜伏先が発覚し、現地の警察と入管が一網打尽にした。

その際に押収された「かけ子」だったCのスマホの写真データを筆者は入手した。100枚以上あるデータを確認していくと、意外な事実が浮かび上がった。

●「長期滞在にもってこい」逃亡者の楽園

画像タイトル 堂々と遊ぶ「トクリュウ」たち

写真には、Cがフィリピン人女性と過ごす様子が写っていた。現地のマリンリゾートで楽しむ姿も複数あった。一緒に写る「モリ」と名乗る男は、まだ捕まっておらず、フィリピン内を逃走中だ。

Cはビザなしで滞在期間を大幅に過ぎた不法滞在者で、日本から逮捕状も出ている。それなのに人が集まるリゾートで堂々と遊んでいるのはなぜか。かつてフィリピンで特殊詐欺に関わっていた人物が語る。

「フィリピンでは、不法滞在だからといって捕まることはありません。普通に買い物ができるし、車にも乗れます。レストランで食事することも問題ありません。交通違反で止められても、少し小遣いを渡せばその場で済みます。怪しむ警察はいません。日本食も韓国料理も中華もある。地元のフィリピン料理も日本人が苦手な味ではない。気候も温暖だし、長期滞在にもってこいの場所ですよ」

今年10月には、約30年前に東京都大田区のゲーム喫茶で強盗をした男がフィリピンに潜伏していたことが報じられた。ほかにも覚せい事件で指名手配を受けたタレント、地面師の主犯格、海賊版サイトの運営者など、フィリピンで潜伏するケースは枚挙にいとまがない。

●公衆トイレの写真は何を意味するのか

画像タイトル 実際のトイレの写真

Cのスマホには、UD(受け子・出し子の隠語)から送られてきたとみられる札束の写真も多かった。数十万円から数百万円まで金額はさまざまだ。またATMで引き出してきた際の明細書も撮影されていた。フィリピン側からすべて証拠写真を送るように指示を受けているのだろう。

Cが関わっていたのはキャッシュカード詐欺だ。カードを騙し取り、暗証番号を聞き出し、ATMで無断引き出しする。一般口座のATM引き出し上限は50万円。そこで複数日にまたがって金を引き出していく。元関係者が説明する。

「カードを奪った日は、まず50万円限界まで。翌朝もう一度引き出すことを"朝抜き"と呼びます。被害者が気づかなければ、預金がなくなるまで取り続けます。UDは引き出した総額から報酬の10%を引いた額をコインロッカーに預けます」

コインロッカーの金を回収するのが"運び屋"で、全国の運び屋から金を集約してフィリピンへ送るのが"金庫"だという。

Cのスマホには、都内の公衆トイレの写真が多数あった。港区や豊島区など場所はバラバラだ。さらにチョコレート菓子の箱の写真も大量に残っていた。

公衆トイレとお菓子──。元関係者がその意味を明かす。

「コインロッカーに入れる現金は裸のままではなく、UDはチョコレート菓子などを買わせ、その空箱に札束を入れてビニール袋に包ませます。そして菓子箱に金を入れたら証拠写真をフィリピン側に送らせます。

別に雇った運び屋をコインロッカーに派遣し、金を集めさせます。運び屋には、都内の公衆トイレの多目的トイレなどに行かせて、トイレの棚などに菓子箱の袋を置かせます。いわば『置き配』です。置かれたら、すぐに金庫が回収します。運び屋と金庫は顔を合わせません」

デパートのトイレを使う組織もあるようだが、このグループは防犯カメラが少ない屋外の公衆トイレを選んでいたという。犯罪の収益金は匿名の人物たちによって、リレー式に運ばれていたのだ。

画像タイトル 実際のお菓子箱の写真

●UD応募者の自撮り写真

スマホには、免許証やマイナンバーカードを手に自撮りする写真も数多く保存されていた。UDの応募者たちで、20代前半の若い女性から、不気味な雰囲気の50代の男性まで幅広い。背景はすべて自室のようで、本人確認として撮影させられているのだろう。

●高齢女性が被害に遭う傾向にある

警察庁によると、昨年の特殊詐欺被害額は約718億円。今年はすでに前年を上回るペースで増えており、9月末時点で過去最悪の965億円を突破した。高齢者の被害が多く、高齢女性が高齢男性より被害に遭う傾向にある。

警察庁はトクリュウの現状と対策をホームページで公表しているが、手口の巧妙化に対して、「現場の刑事たちの声」として、おとり捜査の導入などの改善提案もあるという。

トクリュウによる犯罪被害を防ぐため、どのような捜査が適切なのか。そして我々一人ひとりが問題意識を持つことの重要性が問われている。

画像タイトル 札束の写真

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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