弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 犯罪・刑事事件
  3. 男湯に娘連れてくる「神パパいませんか?」ネット掲示板に「わいせつ」想起の投稿 「性的虐待」と批判相次ぐ
男湯に娘連れてくる「神パパいませんか?」ネット掲示板に「わいせつ」想起の投稿 「性的虐待」と批判相次ぐ
問題の掲示板のスレッド

男湯に娘連れてくる「神パパいませんか?」ネット掲示板に「わいせつ」想起の投稿 「性的虐待」と批判相次ぐ

ネット掲示板に、銭湯の男湯で女児を狙った犯罪をうかがわせる投稿があるとして、Xで波紋が広がっています。

投稿のスレッドでは、男湯に娘を連れてくる父親を「神パパ」と呼び、「神パパ様いませんか?」などと呼びかけるものが複数ありました。これに対し、父親と思われる投稿では連れて行く日時や場所が書き込まれています。真偽は不明ながら、実際に親子と銭湯で会ったという人からは「ありがとうございました」との投稿もありました。

目をそむけたくなるような投稿の中には、実際に女児に触ったというコメントもあります。このスレッドが明らかになると、「性的虐待」「父親も群がるロリコンどもも残らず逮捕されたらいい」などと、警察への通報を呼びかけるべきという意見も相次いでいます。

実際にこんなことがあれば、「神パパ」などとはとんでもない話で、父親の皮を被った悪魔としか言いようがありません。事実かどうかはわかりませんが、仮に事実として、法的にはどのような問題があるのか検討します。

●本記事のまとめ

・そもそも7歳以上の娘との混浴はできないはず

・父親は、不同意わいせつ罪、迷惑防止条例違反や建造物侵入罪等に問われるおそれ

・銭湯に集まった人も、不同意わいせつ罪、迷惑防止条例違反等に問われるおそれ

・書き込みの真偽は定かではないが、危険だと思えば警察や児童相談所等に連絡したほうが良い

●混浴可能な年齢は?

女児の年齢ははっきりしませんが、現在は、7歳以上の女児と、男湯で混浴することは基本的にはできないはずです。

以前は10歳未満の子どもとの混浴が可能でしたが、2020年12月に、国の「公衆浴場における衛生等管理要領」が改正され、公衆浴場における混浴制限年齢が「おおむね10歳以上」から「おおむね7歳以上」 に引き下げられました。

この管理要領自体には法的拘束力があるわけではありませんが、たとえば東京都の条例では、上の改正を受けて、2022年1月1日からは、7歳以上の子どもとの混浴はできなくなっています(公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例 第3条1項11号)。

他の都道府県などでも、風紀上支障がない場合の男女の混浴(たとえば家族風呂の場合)は認めているものの、7歳以上の子どもとの混浴はできないと考えて良いでしょう。

●父親の責任は?

まずはこの父親について。

仮に父親が、女児を第三者に触らせていた場合には、女児は16歳未満であるため、女児の同意の有無にかかわらず、不同意わいせつ罪(刑法176条3項、6カ月以上10年以下の懲役)が成立します。

また、女児を第三者に触らせていなくても、事前に掲示板で通知する等して、女児をことさら浴場で公衆の面前にさらした場合には、公然わいせつ罪(刑法174条の間接正犯ないし共同正犯、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金等)も成立すると思われます。

さらに、このように女児をことさら公衆の面前にさらす行為は、女児をして「卑わいな言動」をさせているともいえるため、各都道府県の迷惑防止条例にも違反すると思われます。(東京都の場合は5条1項3号、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)

このほか、女児をさらす目的で銭湯に立ち入る行為に、建造物侵入罪(刑法130条前段、3年以下の懲役または10万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

なお、父親が娘の年齢を偽って男湯に立ち入らせた場合、そのことが浴場管理者の意思に反しているという意味で建造物侵入罪が成立する可能性や、場合によっては詐欺罪(刑法246条2項、10年以下の懲役)にあたる可能性があります(最高裁決定平成26年3月28日参照)。

●銭湯に集まった人の責任は?

実際に女児に触ってしまった人には、不同意わいせつ罪(刑法176条3項、6カ月以上10年以下の懲役)が成立します。

ただ女児の裸を見ているだけだと、不同意わいせつ罪は成立しません。しかし、浴場内で女児の裸をまじまじと見る行為は、各都道府県の定める迷惑防止条例(卑わいな言動)に違反する可能性があります(東京都の場合は5条1項3号。6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

なお、掲示板の書き込みを見て、女児を見る目的で銭湯に立ち入った場合には、建造物侵入罪(刑法130条前段、3年以下の懲役または10万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

●このような投稿を見てしまったらどうしたらいいのか?

犯罪行為を見つけた場合、警察に通報することは誰にでもできます。義務があるわけではありませんが、今回のケースのように、明らかに児童の性的自由の著しい侵害がある場合には、即刻通報すべきでしょう。

なお、児童福祉法25条1項本文は、「要保護児童を発見した者」は「福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」としています。したがって、銭湯などでこのような状況に遭遇した場合には、児童相談所等に通告する義務があります。(義務を怠っても罰則はありません)

問題なのは、掲示板で「これからどこどこに行きます」といった書き込みはあるものの、その真偽がまったく定かでない場合です。こういった掲示板には、単なる妄想が事実であるかのように書き込まれることも多々あるでしょう。

妄想か現実の犯罪かの区別を事前につけるのは難しいでしょう。しかし、児童に対する犯罪行為が現実におこなわれてしまえば、児童の心身へのダメージは一生回復できないおそれもあります。

そこで、日時・場所などが具体的に書き込まれ、現実に女児に危険が及ぶ危険性があると感じたら、念のため警察等に通報したほうが良いように思います。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする