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猿之助さん「両親が睡眠薬飲んだ」 動機や経緯の違いで「量刑大きく変わる」無理心中
市川猿之助さん(写真:Pasya/アフロ)

猿之助さん「両親が睡眠薬飲んだ」 動機や経緯の違いで「量刑大きく変わる」無理心中

歌舞伎俳優、市川猿之助さんが「一家心中」を図った疑いが報じられている。猿之助さんは命に別状はなく、退院している。警視庁に対して、前日の家族会議を経て「両親が睡眠薬を飲んだ」と説明しているという。

今回のケースが、いわゆる「無理心中」であるかどうかは、今のところはっきりせず、今後の捜査を見守りたいところだ。検察官時代に「無理心中」事件をあつかったことがある西山晴基弁護士に聞いた。

●無理心中にはさまざまな動機がある

「無理心中」と一口で言っても、さまざまな動機による事件があります。

生活苦から将来を悲観した、介護疲れから解放されたくなった、精神障害による幻覚・幻聴に耐えられなくなった――。このような動機から、死んで楽になろうと考えて心中を図るケースがあります。

また、自身の行為の責任を免れようと考えて心中を図るケースや、男女関係のもつれから一緒に死んでしまおうと考えて心中を図るケースもあります。

自分だけではなく、家族を巻き込もうと考える理由には、自分しか家族の面倒を見る者がいないことなどから、家族を残して死ぬことができないと思ってしまうケースもあれば、配偶者に対する独占欲などから一緒に死んでしまおうと思ってしまうケースなどもあります。

●動機の違いで量刑が大きく変わる

このような無理心中事件では、動機の違いだけでも量刑が大きく変わります。

先ほど挙げたように、自身の行為の責任を免れようとか、男女関係のもつれから一緒に死のうなどといった自己中心的で身勝手な動機であれば、懲役10~30年、場合によってはそれ以上の重い刑事処罰が科されることになります。

それに対して、同情の余地があるような動機である場合には、傾向上、刑事処罰が軽くなることがあります。

たとえば、生活苦で精神的に追い込まれて心中を図ったケースでは、場合によっては、10年前後の刑事処罰になることがあります。

また、介護疲れから解放されて楽になろうと考えて心中を図るケースや精神障害による幻覚・幻聴に耐えられなくなって心中を図るケースでは、執行猶予付きの懲役3年になることもあります。

●無理心中に至った経緯によって罪名も変わる

また、無理心中には、自分から家族に心中を持ち掛けたことにより、家族それぞれが自殺に至るケースもあれば、逆に、家族から心中を持ち掛けられるなどして、その家族を殺害して心中を図るケースもあります。

前者は、家族を唆して自殺させる自殺教唆、家族の自殺行為を手助けする自殺幇助があります。後者は、家族から殺すように依頼されて殺害する嘱託殺人があります。その他、話合いの末、家族の同意を得て殺害したといえる場合には、同意殺人に当たるケースもあります。

これらはいずれも刑法202条で規定された犯罪であり、法定刑は6カ月以上7年以下の懲役または禁錮とされています。殺人罪より軽い法定刑になるので、殺人罪よりも執行猶予が付くケースが出てくるでしょう。

●真実とは異なる作られたストーリーで判断されるおそれも

これまで説明してきたとおり、動機や心中に至った経緯によって、量刑が大きく変わるわけですが、無理心中事件では、他の家族が亡くなってしまっており、当時の状況を知っているのは被告人だけであるケースが多々あります。

そのため、被告人の弁解によっては、実際に何があったのか、真相の解明・立証が難しく、場合によっては、真実とは異なる作られたストーリーによって、判断がされてしまうおそれもあります。

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