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 乳腺外科医の準強制わいせつ事件、最高裁が2審有罪判決を破棄差し戻し
最高裁判所(kash* / PIXTA)

乳腺外科医の準強制わいせつ事件、最高裁が2審有罪判決を破棄差し戻し

手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師の上告審判決が2月18日、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)であった。

三浦裁判長は懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。

三浦裁判長は、検察側証人として出廷した医師の見解について「医学的に一般的なものではないことが相当程度うかがわれる」と指摘した上で、「専らそのような見解に基づいて、女性がせん妄に伴う幻覚を体験した可能性を直ちに否定した原判決の判断は、1審判決の判断の不合理性を適切に指摘しているものとは言えない」とした。

また、DNA定量検査の結果の信頼性について、「肯定する方向に働く事情も存在するものの、なお未だ明確でない部分があるにもかかわらず、この点について審理を尽くすことなく、被告人がわいせつ行為をしたと認められるとした原判決には、審理不尽の違法がある」とし、原判決を破棄した。

その上で、定量検査の結果がどの程度信頼し得るものであるかを明らかにするなどした上で、定量検査の結果を始めとする客観的証拠に照らし、あらためて女性の証言の信用性を判断させるため、審理を東京高裁に差し戻した。

●1審、2審判決は

1審東京地裁(2019年2月20日)は、(1)女性が麻酔による「せん妄」という状態だった可能性がある、(2)女性の乳首から男性医師のDNAが検出されたが、会話や触診などで付着した可能性があり、DNA鑑定の信用性に疑いがあるとして、犯罪の証明ができなかったと判断した。

2審東京高裁(2020年7月13日)は、1審が「せん妄の影響を受けていた可能性があり、信用性に疑問が残る」としていた女性の証言について、「迫真性が高い上、知人に送ったLINEメッセージとも符合する。男性医師がベッドの左側にいたことなどは、他の証人の証言と整合しており、犯行の直接証拠として強い証明力を有する」と認めた。

せん妄の可能性については、「事件当時せん妄に陥っていなかった、もしくは、仮にせん妄に陥っていたとしても、せん妄にともなう幻覚は生じていなかったと認められる」として、信用性の判断に影響しないとした。

また、1審が「信用性があるとしても証明力が十分であるとは言えない」としたアミラーゼ鑑定とDNA定量検査については、「科学的な厳密さの点で議論の余地があるとしても、女性の証言と整合するもの」として、信用性を補強する証明力が十分あるとした。

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