手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師の上告審判決は2月18日、懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)の裁判官4人全員一致の意見。
判決を受けて、被告人の弁護団は期日後に声明を発表した。以下、その全文。
「原判決の事実認定が不合理で著しく正義に反するとした点は当然である。
しかし、ただちに無罪を確定させることなく、本件を東京高裁に差し戻したという点は、あまりにも中途半端であり、事件から6年経過した本件について、さらに被告人の立場に置かれ続ける個人に対して甚だ過酷な試練を与える、非人間的な判断であったと言わざるを得ない。
今日の判決は、東京高裁判決の逆転有罪の最大の根拠となった医師(編注:検察側証人)の証言が信頼できないことを明確に指摘した。
さらに高裁判決が有罪の根拠にしたDNA定量検査の検査結果の信頼性が不十分であることも指摘している。そうであるならば、検察官が有罪の立証に失敗したことはすでに明白であるから、最高裁は一審無罪判決を是認し、検察官の控訴を棄却すべきであった。
しかるに、DNA定量検査の信頼性についてさらに審理をさせるというのは、これまでの審理経過から考えて時間の無駄である。なぜならば、科捜研は、定量検査の根拠となる検量線や標準品の増幅曲線、DNA抽出液自体を既に廃棄している。この状態で、定量検査の信頼性を客観的に評価することはそもそも不可能だからである。
さらに今回の判決の不十分な点を指摘するならば、そもそも科捜研が鉛筆書きで多数の書き換えが行われたワークシートしか残さず、検証を行うための資料をすべて廃棄していることを踏まえて、こうした検査結果を刑事裁判の証拠に使うことは許さない、という明確な判断をすることができたはずである。
それこそ法律審である最高裁が行うべきことであった。それにもかかわらず、そうした判断をせずに、不毛な審理をさらに続けることを要求するのは、被告人とその家族にとって甚だ過酷な状況を強いるものである。非人道的というべきである」