阪急・大阪梅田駅近くの繁華街で10月23日に起きた痛ましい事故。ビルから飛び降りた男子高校生の巻き添えになり、路上にいた女子大生も亡くなった。
報道によると、男子生徒は従業員専用の通路を通ったり、屋上ドアの内鍵を覆っていたカバーを壊したりして、屋上に出ていたという。自殺とみられているが、遺書はみつかっていない。
亡くなった女子大生は知人と買い物に来ていたといい、ネットでは「かわいそう」「理不尽だ」といったコメントがみられる。
●「犯給金」の可能性
日本テレビ系のニュースでは、飛び降りた男子生徒について、「殺人の疑いも視野に捜査する方針」との報道もなされている。
もしも殺人となれば、「犯罪被害者等給付金」という制度の対象になる可能性がある。犯罪に巻き込まれ、重傷病を負った人や、命を落とした人の遺族らを対象とし、少しでも被害を減らそうとするものだ。
今回のように被害にあった人が亡くなっている場合は、平均約610万円、最高約2490万円の遺族給付金(2019年度実績)がある。被疑者が亡くなり、裁判が行われないような場合でも、要件を満たしていれば支給される。
ただし、「過失犯」の場合、犯給金は支給されない。過去の同種事故を振り返ってみると、兵庫県西宮市(2004年8月)や東京都豊島区(2007年11月)のケースでは、「重過失致死容疑」で被疑者死亡のまま書類送検されている。
今回の事故も同じような処分になる可能性が高いと考えられる。そうなると犯給金は支給されない。
なお、自治体の条例で被害者支援が定められている場合もある。亡くなった女子大生が住んでいた加古川市でも30万円の遺族給付があるが、国の制度同様、過失では給付できないとのことだった。
●交通事故なら最低限の補償があるのに…
それ以外で、女子大生の遺族にどのような補償がありえるか。
たとえば、男子生徒側を相手として民事訴訟を起こすことが考えられる。だが、亡くなった生徒の損害賠償債務を、その遺族が相続放棄してしまったら元も子もない。そもそも、相手側に払えるだけの資力がない可能性もある。
このほか、個人賠償責任保険なども考えられるが、男子生徒側が加入していなかったり、支払いが受けられなかったりする恐れがある。
犯罪被害者支援に取り組む高田淳弁護士は、「過失犯でも、交通事故は最低限の補償が受けられる仕組みがあります。その他の過失犯のときでも受けられる給付やサポートが必要です」と話す。