アダルト動画販売サイト「AV Market」の運営者が摘発された事件の影響が広がっている。
「AV Market」は、個人が出品したアダルト作品を購入できるサイトだ。現在は「メンテナンス中」として、利用できなくなっている。海外にサーバがあるため、児童ポルノの売買についての捜査は難しいとされてきた。
ところが、新型コロナの影響で、運営者が帰国したことから、愛知県警がことし6月、強制捜査に踏み切った。約2万人分の会員名簿などが押収したほか、9月、10月と児童ポルノの出品者を相次いで逮捕している。
朝日新聞によると、今後は、購入者も立件する方針とみられるという。「AV Market」経由で児童ポルノを購入したとみられる四百数十人から相談を受けているという奥村徹弁護士に聞いた。はたして購入者は立件されるのだろうか。
●捜索押収を確実に避ける方法はない
――販売者や購入者はそれぞれどんな罪に問われるのでしょうか?
販売者は、児童ポルノ禁止法の「提供罪」(7条6項)に問われます。有罪の場合、5年以下の懲役もしくは500万以下の罰金、またはその両方が科されます。購入者は、「自己性的好奇心目的所持罪」(7条1項)に問われます。1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
――購入者についても「単純所持」で立件する方針と報じられています。購入者はどうすればよいでしょうか?
児童ポルノの「単純所持罪」施行後は、販売者(提供犯)を摘発すると、購入者リストを基にして、相手方(購入者)を単純所持容疑で一斉に捜索したうえで、もし所持を現認できれば、摘発するというのがルーティンになっています。
愛知県警の事件では、サイト管理者の逮捕起訴に必要な購入者、販売者の逮捕起訴に必要な購入者に対して、捜索押収がおこなわれましたが、まだ数十人程度だと思われ、購入者の一斉捜索には至っていません。
一方で、単純所持罪では、警察官に児童ポルノを現認されても、単純所持罪のみでは、逮捕されません。現場の警察官だけでは、児童であることの立証が難しいからです。「単純所持・逮捕」という不安を煽る弁護士広告には注意してください。
さらに、捜索されても、削除や破壊によって、児童ポルノを現認できない場合には、ふつう起訴されません。これは、法文上「自己の性的好奇心を満たす目的」「自己の意思に基づいて所持するに至った」等の要件があって、所持状況を立証する必要があるからです。
捜索を受けること自体が不名誉・恥ずかしいとか、在宅勤務で自宅にある会社所有のパソコンが押収されると会社にバレてしまうなどの理由で、捜索押収を回避したいという相談が多いのです。しかし、確実な方法はありません。
過去の同種事案の対応を参考にして、削除・破棄されている場合、捜索押収は空振りに終わり、ふつうは刑事処分にならないので、相談者には、そのことをあらかじめ警察相談で知らせておくなどの対応を提案することがあります。
また、「18歳以上」という商品説明を信じたなど、児童ポルノとは知らないで購入した場合には、その旨を詳細に説明して、単純所持罪の成立を争う必要もあります。
弁護士に相談しないで警察に駆け込んだ人の話では、今回は児童ポルノ画像データのダウンロード販売ということで、データはかさばらず隠しやすいので、「削除した」と言っても媒体の提出を求められたり、「破棄した」と言ってもオンラインストレージにあるんじゃないのかと疑われたりしたケースもあるようです。