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16歳少年が飲食店の箸をペロペロ、友達のSNS投稿で発覚して逮捕 絶えない「バカッター」の罪
写真はイメージ(nonpii / PIXTA)

16歳少年が飲食店の箸をペロペロ、友達のSNS投稿で発覚して逮捕 絶えない「バカッター」の罪

悪ふざけも度が過ぎると、取り返しのつかないことになる。

東海テレビの報道(9月15日配信)によると、16才の少年がこのほど、偽計業務妨害の疑いで、愛知県警に逮捕された。

少年は8月25日、愛知県瀬戸市の飲食店で、客席の箸の束を口でくわえたり、舐めたりするなどして、店に回収や洗浄を余儀なくさせるなどした疑いがあるそうだ。

ともに来店した友人が、少年の犯行の様子を撮影し、SNSに動画を投稿。気づいた店員が被害届を提出したという。

少年は容疑を認めているとのことだが、「飲食店で箸を舐める」という行為には、どんな法的問題があるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。

●偽計業務妨害罪のほかに、器物損壊罪の可能性もある

ーーなぜ偽計業務妨害罪で逮捕されたのでしょうか

箸は業務に使うものであり、それを舐めて使えなくさせることが、業務妨害罪にあたると判断されたのでしょう。

お店の従業員が知らない間に、密かに箸を舐めて、SNSに投稿した行為なので、偽計業務妨害となります。仮に、従業員の目の前で、箸を舐める行為であったならば、威力業務妨害となりえます。

ーーでは、業務妨害のほかに、法的な問題はありますか

器物損壊罪に該当する可能性があります。

器物損壊罪が認められた有名な判例に、「とっくりに放尿した例」があります。洗ったり、消毒したりしたとしても、尿をかけられた酒器を誰も使いたくありませんよね。

通常人が使いたくないと思わせるような行為は、目的物の「効用を害する」行為とされます。物理的には使えても、事実上使えなくしてしまえば、器物損壊にあたるのです。

今回のケースも同様です。箸は折られていませんから、物理的には使えます。しかし、口にくわえたり、舐めたりする行為が、箸の効用を害したとみなされ、器物損壊罪にあたる可能性は高いでしょう。

●飲食店から損害賠償請求をされることもある

ーーイタズラ目的で来店したとして、建造物侵入罪の可能性は?

これは微妙なところですね。たとえば、箸を舐めて、食事をせずに出て行けば、来店の目的が明らかにいやがらせであり、建造物侵入罪に該当するでしょう。

しかし、基本的に飲食店は開かれており、客を選ばず迎え入れています。自由な出入りを認めて、包括的同意があるといえるので、したがって、飲食をしていれば、建造物侵入にはならないと考えられます。

また、今回のケースは上記のような刑事上の処分だけではなく、損害賠償など民事上の責任を負う可能性もあります。

報道でしか状況はわかりませんが、このような事案で少年が逮捕までされることは珍しく、お店がこれまでにも同様の被害に悩んでいたなどの事情があるかもしれません。

少年は「悪ふざけをした」と話しているようですが、悪ふざけに見合わない、法的・金銭的なペナルティーが科されることもありえます。

私のもとにも、少年少女から「インスタグラムに載せるために、入ってはいけないところに入って、イタズラをしてしまった。逮捕されるのかな」とよく相談が届きます。絶対にこのようなことはやめるべきです。

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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