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「我が子と会えない」母親たちが悲痛な訴え…不倫が発覚した元夫が「連れ去り」、子から届いた悲しい写真
会見に出席した母親たち(2020年9月16日、東京都内、弁護士ドットコムニュース撮影)

「我が子と会えない」母親たちが悲痛な訴え…不倫が発覚した元夫が「連れ去り」、子から届いた悲しい写真

別居や離婚後、子どもと離れて暮らす親とが会う「面会交流」をめぐり、当事者団体が法改正などを求め、声をあげた。9月16日、東京・霞が関の厚労記者クラブで会見した「親子ネット」代表の武田典久さんらは「別居親=父親という固定観念があるが、実態はそうではない。この3年くらいで、子どもに会えないお母さんが増えている」と述べた。

会見には、子どもに会えない母親、祖母ら23人の女性当事者が参加し、自身の経験を話した。

●母に届いた『しね』『ババア』『バカ』と書かれた紙をもった子どもたち

「もう私はどこに助けを求めたらよいのかわかりません」

そう話したのは、3人の子がいる宇津木みどりさん(30代、仮名)だ。この3年間、子どもたちの顔を見ることはできていない。

「不貞を繰り返し、子どもたちをも巻き込む夫を信頼することは無理だと思い、家を出る決意をしました。ところが家を出る日、夫と義母に『子どもたちを連れて実家に来い』と言われて行くと、3時間罵倒され続けました」。

夜遅くなったことから、その日は子どもたちは夫の実家に宿泊することになった。翌日、迎えに行っても返してもらえず、そのまま別居が始まってしまった。夫の不貞や、子どもを義母に預けて不貞相手と同棲している証拠を出したものの、監護者は夫と指定されたという。

「(直接の面会交流は認められず)月に一度、写真が送られてくることになりました。送られてきた写真も、私が送った手紙を破っている写真や『しね』『ババア』『バカ』と書かれた紙を持っている写真、中指をたてたポーズをするものでした」(宇津木さん)

写真にショックを受けたが、そのような写真を撮らされている子どもの精神状態を心配した宇津木さんは、学校や自治体の相談センター、児童相談所に相談するも「虐待にはあたらない」などとして、対応はしてもらえずにいる。

●「連れ去り」をした元夫、親権が認められず「養育費、面会交流はなくなった」

親権は、男女どちらの親かに関係なく「別居後、継続した監護をした親に親権は認められることが多い」と親子ネットの武田さんは指摘する。

Kさん(30代)の場合、離婚協議中の元夫に「連れ去り」をされて監護の実績を奪われたものの、離婚後の親権者は離れて暮らしていたKさんに決まった珍しいケースだといえる。Kさんは、元夫と義母らによる「連れ去り」によって、子どもたちと離れて暮らすことになったと主張する。

「当時5歳と2歳だった息子たちは、離婚協議中だった夫と、その両親、兄夫婦によって無理やり連れ去られてしまいました。私は必死に抵抗しましたが、子どもたちは義兄の運転する車の中に押し込められ、私は車の前に立ちはだかるも、義母に突き飛ばされて、車はそのすきに発車してしまいました」

離婚協議の理由は、夫の不倫と、夫の実家から何度もお金を無心されたことなどが原因だった。子の引き渡しを求めて審判を申し立てたが、ようやく子どもたちに会えたのは突然の「連れ去り」から3カ月が経過していた。

「裁判所での試行面会で、長男は『ママのことは大嫌い』と言い続けました。でも最後の最後に『(大嫌いと言う)練習してきた。ママのこと大好き』ととても小さな声で言いました」

裁判ではKさんに親権が認められた。「連れ去り」をしてまで子の養育にかかわる意思を持っていたはずの元夫だったが、離婚後は「養育費、面会交流も次第に滞り、(今では)養育費、面会交流はなくなってしまいました」と話す。

●脅迫による離婚の無効が認められても、親権は元夫に

Kさんは幸いにして、裁判所で親権が認められたが、鈴木有紗美さん(40代、仮名)のように、悪質な「連れ去り」が裁判所で認められても、監護者指定や面会交流の審判ではその点が考慮されないこともある。

鈴木さんは娘が3歳になる直前、「元夫に脅迫され、無理やり白紙の離婚届に判を押させられ、無断に親権欄に夫の名前を記入、提出され、娘を連れ去られて、その後3年間まったく会うことができませんでした」と明かした。

「北朝鮮に拉致された我が子を諦めることができない方々と同じように、諦めるわけもない」との思いで、離婚の無効を求めて裁判へ。3年後、「(さまざまな弁護士に)不可能と言われた脅迫に基づく離婚の取り消しが最高裁より認められ、共同親権に復することができました」(鈴木さん)。

ところが、その後の監護者指定や面会交流の審判、離婚裁判は鈴木さんにとって予想外の結果となった。

「脅迫によって親権者となった夫の3年間の監護実績、つまり継続性の原則のみが適用され、元夫が親権者となりました」。夫婦間の高葛藤を理由に、娘との面会交流に関しては2カ月に1度、3時間しか認められておらず、さらにコロナ禍で面会交流はできずにいる。

会見で鈴木さんは「悲しい親子断絶の現実は、継続性の原則を最優先する司法のもと、さらに加速の一途をたどっている」と厳しく批判した。

●当事者団体、約3割が女性会員

会見に出席した棚瀬孝雄弁護士は「私は(面会交流によって)会えばいいのではなくて、同居中に匹敵するくらいの共同監護をしなければいけないと考えている。そもそも会えていない、会えても2、3カ月に1回、数時間程度では親子になれない。欧米のように(共同養育の時間を)50:50は無理でも、せめて20%くらいの時間、会う必要がある」と指摘した。

親子ネットは現在、全国に512人の会員がおり、そのうち約3割にあたる156名が母親だ。今後、「子どもの連れ去りを原則禁止とするほか、離婚時に面会交流ガイドライン、養育計画の作成義務化など離婚関連司法手続きのあり方についての検討、子のいる両親の離婚への司法関与などを提言していきたい」(武田さん)という。

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