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2020年09月05日 08時04分

競馬の予想「パクって有料販売」が横行、noteなどで問題に…予想家の謝罪あいつぐ

競馬の予想「パクって有料販売」が横行、noteなどで問題に…予想家の謝罪あいつぐ
画像はイメージです(nagi / PIXTA)

コロナ問題でさまざまな産業がダメージを受ける中、好調なのが競馬業界だ。ネットで投票ができることもあり、中央・地方ともに前年以上の売り上げを記録している。

こうした中、メディアプラットフォーム「note」や「サロン」などで、有料予想の「パクり」問題が起きている。

たとえばこのほど、あるYouTuberが別の予想家の予想を盗用し、自身のnoteなどで販売するという出来事があった。馬の番号だけでなく、予想の根拠(見解)をほぼコピペしていたため、謝罪に追い込まれている。

画像タイトル 問題となったYouTuberの謝罪文より

また、馬の番号のみを記載しているようなエントリーについて、別の有料予想との一致率の高さから、パクりが発覚するというケースも。

有料・無料を問わず、他人の予想をパクった場合、法的にはどんな問題が発生するのだろうか。甲本晃啓弁護士に聞いた。

●番号の組み合わせに著作権はある?

ーー予想のパクリに法的な問題はありますか?

まず、結論からいうと、もちろん程度の問題はありますが、他人の競馬の予想をそのまま無断で転載したり、その予想内容を盗用したりすることは、原則として違法性があると考えられます。

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ーー競馬の予想に著作権があるということでしょうか?

確かに真っ先に問題となりそうなのが著作権です。ある競馬予想について「どうしてそう考えたのか」という理由を本人なりに文章で表現したものを、そのまま無断転載すれば著作権侵害になるというのは、感覚的にも理解しやすいものと思います。

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他方で、他人が予想した番号(上位に来るであろう馬の出走番号)の組み合わせ(以下「予想番号」といいます )についてはどうでしょうか。

予想番号のそれ自体は、単なる情報ですから、これに著作権は成立しません。なぜなら、著作権は人の考えそのものを保護対象としていないからです。

著作権とは、人の考えを創作的に表現したものに成立するとされており、ここにいう「創作的」とは「ありふれたものではない」という意味です。

予想番号は、予想を表現する割合ありふれた方法ですから、著作権の対象ではないと考えられます。確かに、予想は偶然同じになることがありますから、誰かひとりに著作権を認めてしまうと、別の人がその予想番号を使うことができなくなるので、不都合が生じますよね。

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なお、過去の裁判例(東京高裁昭和62年2月19日判決、いわゆる「当落予想表事件」)には、競馬の出走表にならって「▲」などの記号を使って作成された国政選挙の候補者の当落予想表について著作権を認めたものがあります。

ただ、競馬の出走表における記号で予想を表現する方法について一般的に著作権の成立を認める判断をしたものではありません。

細かな情報が記載された出走表はともかくとして、単に出走馬とその番号と予想を表す「◎」などの記号を書いただけの簡易な出走表については、著作権が認められるケースは少ないと思います。

●予想番号のパクリには著作権以外の問題が

ーー著作権を侵害しないのであれば、他人が出した予想番号を自由に使っても良いのでしょうか?

予想番号の盗用は著作権侵害にあたらないとしても、汗水たらして予想した人から見れば断じて許される行為ではないでしょう。

情報にただ乗り(フリーライド)する行為は、倫理的な非難を受けることは当然ですし、現在の裁判例に照らしても、社会的許容性を超えるような形で盗用した場合には、「一般不法行為」の観点から違法性が認められると考えられます。

違法性が認められれば、盗用された被害者から損害賠償請求を受けることになります。

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これについては、ネット上の情報転載のリーディングケースとなる2005年の裁判例(知財高裁平成17年10月6日判決、いわゆる「ヨミウリ・オンライン事件」)が参考になります。

裁判所は、ネットニュース記事の見出しを無断転載したという事例について、「見出し」は著作権の対象ではないとしつつも、「相応の苦労・工夫により作成された」ものであって「法的保護に値する」と判断しました。

そして、情報の「鮮度」が高く「商品価値を失っていない間」に、これをまるごと転載したものであると行為を認定したうえで、このような行為は「ただ乗り」であって、一般不法行為として「極めて違法性が高い」と判断しています。

競馬の予想はレース開催までの間が旬であり、予想自体も有料で取引されるケースもあるので、予想番号を盗用した場合には、おそらくこの裁判例を踏まえて「ただ乗り」にあたるとして、違法性は認められると思われます。

●「偶然一緒になった」は通用する?

ーー予想番号が偶然一緒になることもあります。「ただ乗り」かどうかはどうやって判断されますか?

「ただ乗り」とされるのは、盗用された予想に依拠していると判断できる場合です。例えば、偶然の一致で説明できないほど、何レースにもわたり予想が忠実に再現されているようなケースだと考えられます。

どの程度の一致で盗用と認定されるかは、最終的に争いになれば裁判官の判断になりますが、「常識的にみて、ちょっとここまで一致はないよね」という一般人の感覚と大きく違わないものと思います。

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なお、公開されている他人の予想を参考に独自の予想を組み立てることまでは「ただ乗り」と評価されることはないでしょう。

●有料公開なら「売り上げプラス最低でも数十万円」が相場か

ーーパクッた予想を売った場合、判断は変わりますか?

予想番号の盗用元でその情報が有償で提供されているものかどうか、盗用者が盗用した情報を有償で販売していたかどうかは、盗用行為に違法性があるかないかの判断には直接影響しないと思います。

影響するのは違法性の程度、つまり損害賠償の金額だと考えられます。例えば、有償で公開されている情報を盗用したり、盗用した情報を使って対価を得た場合には、そうでない場合よりは損害賠償の金額は高くなると思います。

どの程度の金額が認められるかは、競馬予想のフリーライドについて裁判で判断された事例がないため、著作物の盗用事例と同じような相場観であれば、盗用した予想番号を有償で公開していたような場合には、得た利益に加え、最低でも数十万円単位の慰謝料が認められるものと考えられます。

取材協力弁護士

甲本 晃啓弁護士
東京・日本橋兜町に事務所を構える弁護士・弁理士。東京大学大学院出身。著作権と商標に明るく、専門は知的財産とIT法。多くの企業法律顧問を務める。個人向けサービスとしてネット名誉毀損「加害者」の弁護に特化したサイト「名誉毀損ドットコム」(http://meiyo-kison.com)を2016年7月から運営。
事務所URL:http://komoto.jp

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