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2020年08月01日 08時56分

偽ブランド時計、香港の店からネットショッピングで購入 ホントは買ったらダメ?

偽ブランド時計、香港の店からネットショッピングで購入 ホントは買ったらダメ?
画像はイメージです(cba / PIXTA)

数十万円、時には数百万円する高級時計が欲しいと思ったことがあるかもしれない。とはいえ、今の時代、月給以上の品を購入する人は少ないはずだ。そこで欲望が抑えきれない一部の人は、偽ブランドを手にすることがあるという。

都内のメディア関連企業に勤める男性(40代)は先日、「休日に遊び感覚でつけるもの」と自分に言い訳して、香港のショッピングサイトで偽ブランドの腕時計を購入した。船便で送られてきたその品は、本家本元とは似ても似つかないチープ感だが「たまにつけるくらいなら」と自分を納得させているという。

送料を含めて数千円程度だったが、本物の100分の1程度の金額だったそうだ。ただ、このような行為は法的な問題になるのではないか、という点が気がかかりでいる。この男性の疑問について、冨宅恵弁護士に聞いた。

●「関税法の問題が発生する」

ーーこの男性のケースでは、どのような点が問題となりますか

偽ブランド品を海外で購入して自身で日本に持ち込む場合、インターネットを通じて購入して日本に持ち込む場合のいずれであっても、関税法の問題が発生します。

というのも関税法では、覚せい剤など違法薬物やけん銃などとともに、特許権や商標権などの知的財産権を侵害する物品が輸入してはならないもの(禁制品)として定められているからです。

そのため偽ブランド品が商標権を侵害する物品にあたる場合には輸入することはできません。これに故意で違反した場合には、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金、その両方の刑を科されることになります。

ーー「商標権を侵害する物品」とは具体的に、どのようなものですか

関税法には、商標権を侵害する物品を定義した規定が存在しませんので、商標権を侵害する物品であるかどうかの判断は、商標法に基づくことになります。

商標法では、「商標」を定義しているのですが、少し理解しづらい内容になっています。 まず、商標法では、「標章」というものが定義されており、それを一定の行為に使用するものを「商標」と定めています。

具体的には、「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」を「標章」と定め、「標章」を、商品との関係では、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」を「商標」と定められています。

つまり、業として商品を生産したり、譲渡などする人のもとでは「商標」であるが、私的に使用したり、不要になり譲渡する人のもとでは「標章」ではあるものの、「商標」ではないということになるわけです。

ーー偽ブランドの場合はどうなるのでしょうか

例えば、偽ブランド品を生産し、卸に譲渡し、卸から販売業者に譲渡され、販売業者から購入した人が自ら使用している場合、同じブランドのロゴマークであったとしても、生産業者、卸業者、販売業者のもとでは「商標」であるにもかかわらず、自ら使用している人のもとでは「標章」ではあるものの「商標」ではないということになるわけです。

そして、商標法で定められている商標権は、商品との関係では、登録時に指定した指定商品について登録商標を使用する権利を独占的に支配する権利ですので、自身のもとでは「標章」に過ぎない自ら使用する人に対して商標権が及ばず、商標権を侵害していないことになります。

ーーということは、男性が偽ブランドを購入したことに法的な問題はないということでしょうか

偽ブランドを自ら使用する人のもとでは商標権侵害が成立しない以上、商標権を侵害する物品にもあたりませんので、関税法との関係で、輸入してはならないものにあたらず、輸入することに問題がありません。

そして、偽ブランド品を日本で使用していたとしても商標権を侵害しているわけではないので、商標法との関係でも何も問題はないということになるわけです。

●「特許権や著作権についても同様」

ーー驚くような結論ですね

はい。この結論に目を疑う方も多いかと思いますが、特許権や著作権についても同様のことがいえるのです。

特許法で保護される発明は、商標のように、人の属性により発明であったり、発明でなくなったりということはありませんが、特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有するだけですので、私に特許発明を実施している者に対して、特許権が及ぶことがありません。

また、著作権法でも、著作物を複製する権利には例外規定が存在し、私的に使用する目的で著作物を複製しても、原則として複製権を侵害しないと定められているのです。

商標法では、少し変わった規定になっていますが、私的に使用する者のもとでは、そもそも商標ではないと規定する方法により、私的な領域に入っていかないというスタンスをとっているわけです。

取材協力弁護士

冨宅 恵弁護士
大阪工業大学知的財産研究科客員教授。多くの知的財産侵害事件に携わり、プロダクトデザインの保護に関する著書を執筆している。さらに、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。<https://www.youtube.com/channel/UC66weA-gGPQzswgAtVqjbSw>

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