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「刑が軽すぎる」飲酒運転の死亡事故で繰り返される遺族の声 量刑はなぜ重くならないのか
法廷のイメージ(takeuchi masato / PIXTA)

「刑が軽すぎる」飲酒運転の死亡事故で繰り返される遺族の声 量刑はなぜ重くならないのか

飲酒運転による死亡事故の裁判では、判決が言い渡されるたびに、遺族から「刑が軽すぎる」という声が上がります。法改正で厳罰化が進んできたにもかかわらず、同じ光景が繰り返されています。

近年では、福島県郡山市で2025年1月、受験のため訪れていた19歳の女性が、酒気帯びで赤信号を無視した車にはねられて死亡した事故では、懲役16年の求刑に対し、一審判決は懲役12年でした。福島民報によると、女性の母親は「あまりに刑が軽い」とコメントしています。

北海道小樽市で2024年9月、約12時間にわたって酒を飲んだ男の車が対向車と正面衝突し、大学院生(当時24)が亡くなった事故では、危険運転致死罪に問われた男に対する懲役4年6か月(求刑懲役5年6か月)の判決が、今年8月に確定しました。読売新聞によると、事故から2年となった9月、遺族は「4年6月という判決では、飲酒運転の抑止力にはならない」と語っています。

なぜ、遺族の思いと実際の判決との間に、これほどの開きが生まれるのでしょうか。小樽の事件を例に、量刑が決まる仕組みと、今後変わる可能性を考えます。

●「危険運転致死罪」は過失ではなく「故意犯」

まず、小樽の事件では、過失犯(「うっかり」起こした犯罪)だから刑が軽いというわけではありません。

今回の事件では、危険運転致死罪(自動車運転処罰法3条)が適用されており、同罪は故意犯(「わざと」起こした犯罪)です。

ただし、殺人罪とは異なり、「人を死なせるつもり」までは不要です。

アルコールの影響で、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがあることを認識して運転していれば成立します。

●飲酒による危険運転致死罪の2つの条文

飲酒による危険運転致死罪には、主に2つの規定があります。

2条は、酒の影響で「正常な運転が困難な状態」で人を死亡させた場合で、刑の上限は懲役20年です。

3条は、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で運転し、実際に運転困難に陥って人を死亡させた場合で、上限は懲役15年です。

今回適用されたのは3条でした。

2条は裁判員裁判の対象ですが、3条は対象外のため裁判官のみで審理されました。

男が「居眠りしていた」と説明したことなどからアルコールの影響の立証が難しく、起訴まで時間を要しています。

●4年6か月は実務の相場に沿った判決

3条の危険運転致死罪の上限は懲役15年ですが、本件の検察官の求刑は懲役5年6か月でした。

裁判所は過去の同種事件の量刑傾向を重視して判決を決めるため、求刑や過去の相場から大きく離れた重い判決を出すことには慎重です。

私が調べた限りでは、3条が適用された飲酒死亡事故で判例集から確認できる刑は3年6か月から4年6か月で、今回の判決も従来の実務の相場に沿ったものといえます。

●法律や運用の見直しに向けた議論は続く

この判決は従来の実務に沿ったものですが、「これまでの基準が正しかった」とは限りません。

声をあげていくことは、将来の量刑相場を動かす力になります。

また、今後、そもそも3条の適用範囲そのものが狭くなる可能性は十分あります。

今年7月に自動車運転処罰法の改正法が施行され、2条に「呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上」という数値基準が入りました。

つまり、呼気1リットルにつき0.5ミリグラム以上のアルコールが検出された場合、同法2条が適用されることになります。

法務省は法制審議会の部会で、呼気がこの数値以上なのに3条にとどまるのは「極めて例外的」だと説明しています。

ただし、今回の事故は改正前のもので、新しい基準は適用されません。呼気の具体的な数値も公表されていません。

一方、飲酒運転による死傷事犯の遺族からのヒアリングでは、道路交通法上の酒気帯び運転の基準である呼気1リットル当たり0.15ミリグラム以上で死傷事故を起こした場合には、危険運転致死傷罪を適用できるようにすべきだとの意見が出されており、遺族側の意見とは3倍以上の差があります。

2条なのか3条なのか。数値基準がどうあるべきなのか。また、どの条文にしてももっと重い刑を言い渡すべきではないか。

国民が声をあげ続けたこともあって、危険運転致死罪が創設され、それまでより重い処罰が可能になりました。

今後も声をあげ続けることで、法律の内容や量刑の相場も変わっていく可能性があります。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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