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2015年11月23日 09時01分

「3世代同居」優遇措置は少子化対策にならない?「ほかの施策を充実すべき」と弁護士

「3世代同居」優遇措置は少子化対策にならない?「ほかの施策を充実すべき」と弁護士
写真はイメージです

政府が打ち出した、新たなる子育て支援は本当に意味があるのかーー。子育て世代の家族が親世代との同居を目的とした改修工事費用をおこなった場合、所得税や相続税を軽減するという方向で、政府が10月下旬から検討を始めたと報じられている。

子育て負担を軽くし、出生率の低下に歯止めをかける狙いだという。具体的には、住宅のトイレや浴室の増設など同居向け改修を行った世帯に、工事費用の年末ローン残高5%分を5年間、所得税額から控除するなどの案が検討されている。

また、同居中の親世代から居住用の宅地相続を受けた場合、同居期間が3年以上のときは、相続税の特例による減額幅を最大90%まで引き上げる案も浮上している。

しかし、ネットでは、三世代同居は「家事、労働、育児、介護と地獄でしかない」など女性からの反発も散見される。はたして、「三世代同居」に対する優遇措置は、少子化対策として本当に有効なのだろうか。橋本智子弁護士に聞いた。

●「少子化対策としては有効とは思わない」

「『この施策が少子化対策として有効かどうか』という問いに対しては、『有効とは思わない』といわざるをえません。

この優遇措置を打ち出した背景には、『家族は、互いに助け合わなければならない』とわざわざ憲法で規定しようとする(自民党の憲法改正草案24条1項)与党・自民党の根本的な家族観の露骨な現れだと感じざるを得ません。今回改めて、その意識の強さ、執拗さに対して、あえて言うならば恐ろしさを感じました。

なぜ『子育て支援』『少子化対策』として、このような制度しか考えられないのでしょうか。自民党の基本的な発想は、私には『社会全体が子育てを担う』あるいは『協力し合うという』のではなく、『基本、家族の中でやりなさい』というものなのだということが、今回改めて明らかになったように思います」

いま求められている子育て支援とは、本来どのようなものなのだろうか。

「子育て支援とは、『病児・病後保育を含めた保育体制を充実させる』、『それにかかる個人負担を減らす』、『育休を長く取りやすくするため、企業に対するなんらかの支援措置を行う』などのかたちで行うべきです。

それをせず、『まずは家族単位でなんとかしろ』といわんばかりの自民党のやりかたには、改めて、強い危機感を持ちます。

親世代と同居することで、女性が子どもを産みやすくなるだとか働きやすくなるなどと、本気で考えているのでしょうか? むしろ、すでに指摘されているように、介護についてもなるべく家族単位で(つまり『嫁』や『主婦』の立場の女性たちに)担わせやすくするという狙いのほうが『本命』なのではないでしょうか」

●嫁や主婦は「NO」と言いづらくなる・・・

三世代同居に対する優遇措置を導入すること自体にも、問題があるのだろうか。 

「もちろんこれは、三世代同居を強制する(しない人に不利益を課す)ものではなく、同居する人に利益を与える(税金面で優遇する)ことによって後押しするものです。この制度自体は、必ずしも不当とはいえないでしょうし、使いたくない人は使わなければいいだけの話です。実際に使おうという人は決して多くはないと思われますが・・・。

ただ、このような制度があることによって、子ども世代(特に、『嫁』『主婦』)にとって、親世代の同居の申し出に『NO』と言いにくくなる影響はありそうです。子ども世代に『同居したい』という意思があれば問題ありませんが、そうではない場合には、難しい選択を迫られる人も出てくるでしょう」

最後に、橋本弁護士は次のように指摘した。

「ところで、この減税措置のしわ寄せは、一体どこに行くんでしょうか。特定の人たちについて減税することは、実質的には、その人たちのために国の税金を使うことになります。

せっかく税金を使うならば、『保育料の負担を軽くする』『不妊カップルに治療費をサポートする』などのかたちで使ってほしいと強く思います」

(弁護士ドットコムニュース)

橋本 智子弁護士
大阪弁護士会所属 犯罪被害者支援委員会 委員
共著書『モラル・ハラスメント こころの暴力を乗り越える』(2014年、緑風出版)『Q&Aモラル・ハラスメント 弁護士とカウンセラーが答える 見えないDVとの決別』(2007年、明石書店)
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