TBSの朝の情報番組「白熱ライブ ビビット」で、20代女性が理想とする「専業主婦」のイメージが紹介され、話題となった。
番組では、街で20代女性にインタビューを実施。その結果、夫の条件として「収入は700~800万」「亭主関白ではない人」があげられた。一方、自分が思い描く専業主婦のイメージとして、「ラクそう」「寝たい時に寝られる」「お昼は友達とランチ→ヨガ→エステ」といった項目が紹介されていた。
この結果を写した画像が「これ専業主婦やない、ニートや」という言葉とともに、ツイッターに投稿されて拡散。2万以上リツイートされ、「旦那さんじゃなく、お金に嫁いでる感じ」「嫁は旦那が一生懸命働いたお金で家事もろくにせずに遊び呆けたいと・・・」といった批判的な意見が寄せられた。
夫が働いてお金を稼ぎ、妻は専業主婦という夫婦の場合、そのお金は「2人のモノ」ということになるのか。夫が稼いだお金を、妻が勝手に外食や習い事に使った場合、なにか問題はないのだろうか。須山幸一郎弁護士に聞いた。
●「夫のモノは夫のモノ、妻のモノは妻のモノ」が原則
「日本の民法は夫婦別産制をとっています(民法762条1項)。これは『夫のモノは夫のモノ、妻のモノは妻のモノ』という、ごく当たり前のことを規定したものです。
結婚したからといって、妻のモノが夫のモノになったり、妻のモノが夫のモノになったりすることはありません」
須山弁護士はこのように述べる。だが、結婚生活を続けていくと、どちらのモノかよくわからないケースも出てくるのではないか。
「そうした場合は、共有、つまり夫婦2人のモノと推定されます(民法762条2項)。
一方、夫が外で働いて、妻が家事を行う場合、住居や預貯金、有価証券などが夫名義になっていることが多くあります。この場合でも、妻の協力により作られた財産として、実質的には共有と見るべきとされています。
また、夫婦は同居し、互いに協力して助け合わなければならず(民法752条)、生活など夫婦生活を続けるために必要な費用(婚姻費用)は分担することになっています(民法760条)。
外で働いている夫または妻が、配偶者に生活費を渡すことは、この義務を果たすことにほかならず、家事労働の対価ではありません。
婚姻費用を誰がどのように負担するのかは、夫婦が平等な当事者として、話し合って決めます。共働きの場合や、どちらかに家賃収入や利子収入などの不労所得などがある場合は、収入額に応じて按分負担することが原則になります」
夫が働いて、妻が専業主婦という場合は、妻がお金を自由に使ってもよいのだろうか。
「夫が稼いだお金をどのように使うのかは、夫婦で話し合って決めるべきことですので、妻が自由に使うことは許されません。
しかし、いわゆる『小遣い』のように、一定額の金額を決めておけば、その金額の範囲内では互いに自由に使うことができるでしょう」
●離婚の際にトラブルに発展するケースとは?
もし、離婚ということになった場合、共有とされてきた財産は、どう扱われるのだろうか。
「夫婦生活で形成してきた財産をどのように分けるのかという『財産分与』の話し合いをすることになります。
財産分与をする際にトラブルに発展しやすいのが『夫(妻)が財産を隠していることが発覚した』というケースです。不動産や自動車などは隠しようがありませんが、最近はネット系の金融機関も多く、別居時の預貯金や積立型の保険、保有株式などの有無でもめることが多くあります。
したがって、夫婦どちら名義で管理をしていても構いませんが、どこの金融機関にいくつ口座を持っているのか、保険契約はどうなっているのか、どこの証券会社を利用しているのかなどについては、互いに明らかにしておくことが、離婚時の紛争予防に役立つでしょう」
須山弁護士はこのように述べていた。