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解雇の「金銭解決制度」弁護士が批判「違法解雇のハードルを下げてしまいかねない」
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解雇の「金銭解決制度」弁護士が批判「違法解雇のハードルを下げてしまいかねない」

労働者の解雇をめぐる争いを「金銭」で解決する制度について、厚労省の検討会が10月下旬、導入に向けた議論を始めた。

これは、裁判で「解雇は無効」という判決が出ても、会社が従業員に金銭を払えば退職させられるという制度だ。現状では企業が復帰を拒み、お金を払って解決せざるを得ないケースが多いため、金銭で解決することで双方にメリットがあると、政府や経済界が主張している。

このような仕組みが導入されれば、労働者にはどんな影響があるだろうか。労働問題に詳しい白川秀之弁護士に聞いた。

●現状でも「金銭解決」は可能

「労働事件を戦う弁護士としての感覚からすれば、解雇の金銭解決制度は不要だと思います」

白川弁護士はこう述べる。なぜだろうか。

「現在でも、労働者側が解雇に関する争いを金銭で解決をしたいと望めば、いつでもその機会があるからです。

たとえば、労働審判の申し立てを行う場合、多くのケースでは、労働審判委員会は紛争を金銭で解決することを打診してきます。

また、解雇の無効を裁判で争う場合でも、和解の過程の中で、紛争を金銭で解決をすることを打診されることもあります。

労働者勝訴の判決が出た後であっても、企業との話合いで金銭解決をすることは十分可能です」

●判決に至る事件の多くは、労働者が復職を強く求めるケース

では、新たにこうした制度を導入する必要はあるのだろうか。

「使用者にとっては、いったん企業から放り出した労働者を再び受け入れるよりも、金銭を払って解決をすることに抵抗が少ないという点があげられるでしょう。

しかし、判決にまで至る事件の多くは、労働者が金銭での解決ではなく、心から復職を強く求めるケースです。そもそも、違法な解雇をして労働者を職場から追放し、裁判でその違法性が確認されたのであれば、使用者は労働者を職場に戻すべきでしょう。

したがって、解雇の金銭解決は全く必要のない制度だと言えます。

むしろ、この制度の最終的な目的は、改正によって使用者に金銭解決の申し立てをする権利を与え、使用者の側が違法な解雇を金銭で解決することを可能にすることだと思います。 

そのようなことになっては、使用者の違法な解雇に対するハードルを下げ、労働者、特に正社員の雇用を不安定にさせることになりかねないと思います」

白川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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