弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 民事・その他
  3. 「共同親権を申し立てるぞ」AI活用うかがう長文申立書も…制度導入3カ月、弁護士が語る現場の変化

Googleトップニュースでフォロー

フォローの仕方はこちら
Add as a preferred source on Google
「共同親権を申し立てるぞ」AI活用うかがう長文申立書も…制度導入3カ月、弁護士が語る現場の変化
写真はイメージです(shimi / PIXTA)

「共同親権を申し立てるぞ」AI活用うかがう長文申立書も…制度導入3カ月、弁護士が語る現場の変化

離婚後の共同親権制度が今年4月に施行されてから、約3カ月が経過した。

共同親権の影響か、今年3月から4月にかけて、家事事件も増えている。最高裁の統計によると、今年1月から4月までに新規に受け付けた家事事件は、43万5374件にのぼり、前年同期に比べて2万件近く増加した。

制度導入前には、DVやモラハラ加害者による制度の悪用、家庭裁判所の運用への影響、子どもをめぐる親同士の対立の激化など、さまざまな懸念が指摘されていた。

制度導入後の現在、家庭裁判所や離婚実務の現場ではどのような変化がみられるのか。共同親権制度に対する問題提起を続けてきた岡村晴美弁護士に聞いた。

●「共同親権を期待していたのでは」

制度導入から約3カ月。岡村弁護士は、現場では大きく二つの変化があると感じているという。

一つは、離婚訴訟や親権争いの結論を制度施行後に迎えることを期待していたように見えるケースだ。

制度導入後に離婚が成立すれば、共同親権を選択できる可能性があることから、訴訟の進行に影響を与えたのではないかと感じる事案もあったという。

「婚姻時と同じく共同親権を続けたい、あるいは離婚したくないという人が、期日の調整や反論の追加などを理由にして、4月1日以降に判断が出るよう進行を遅らせようとしていたのではないか、と感じた事案がありました」

ただし、制度導入後であっても、こうしたケースで共同親権が認められているわけではないという。

「離婚後の単独親権を争っているような対立の激しい事案(高葛藤事案)や、離婚そのものを争っている事案は、そもそも共同親権になじみにくいケースが多いです。

婚姻中の共同親権を盾にして、『親権者の私に相談なく勝手に転校させた』などと言って、相手を『協力義務違反だ』と責め立てるような人と、離婚後に共同親権を円滑に運用できる関係を築くのは難しいからです」

岡村弁護士によると、共同親権導入以前、単独親権が相当と考えられていたケースについて、家庭裁判所の判断が大きく変わったという印象はないという。

「現状、父母の対立が強い事案では、やはり共同親権は難しいという判断になっているように感じます」

●増えている「共同親権への変更申立て」

もう一つの変化は、すでに離婚した父母の間で起きているという。単独親権から共同親権へと変更を求める申立てだ。

「家庭裁判所の統計を見なければ正確なことはわかりませんが、想定していたほど爆発的に増えている印象はありません。ただ、それでも増えているなという実感はあります」と岡村弁護士は話す。

岡村弁護士によると、その内容にも一定の傾向が見られるという。

「弁護士が代理人として付いておらず、本人による申立てが非常に多いです。中には、生成AIの活用がうかがわれるような長文の申立書も見受けられます。

一見すると丁寧な文章なのですが、内容を読むと相手方への非難が中心になっているものもあります。『あなたの子育てでは心配だ』といった内容が長く記載されているケースもあり、中には20ページ近い申立書もありました」

●「共同親権を申し立てるぞ」が交渉カードになる?

DV被害者の支援を続けてきた岡村弁護士が特に懸念しているのは、共同親権の申立てが元配偶者との交渉材料として使われるケースだ。

家庭裁判所は子どもの利益や安全を考慮したうえで面会交流の回数などを決めるが、別居親の希望どおりにならないことも少なくない。

そうした中、単独親権を持つある同居親のもとに、別居親からこんなメッセージが届いたという。

「共同親権を申し立ててほしくないなら、面会交流の回数を増やせ」

岡村弁護士によると、実際に共同親権の申立てを受けた側には大きな負担が生じる。

「申し立てた本人は弁護士に依頼もしていないことも多く、負担は比較的小さいです。

しかし、申し立てられた側は長文の書面を読み、対応を考えなければなりません。仕事や育児に追われる中で、自分での対応が難しいと感じれば弁護士への依頼も検討することになります」

法テラスを利用した場合でも、一定の費用負担は生じる。

「認められる可能性が高くない申立てであっても、申し立てられた側には精神的・経済的負担も生じます。そのため、中には、相手方への圧力や交渉材料として利用されているのではないか思わざるを得ないケースもあります」

夫からDVやモラハラを受けている女性の中には、「どうせ離婚しても、共同親権にさせられて、夫の鎖から逃れられないんですよね」と不安を口にする人もいるという。

●共同親権への移行がスムーズなケースも

一方で、共同親権へとスムーズに移行し、制度が機能しているケースもある。

「子どもが中学生や高校生など比較的年齢が高く、父母双方が子どもの意見を尊重できるケースです」

離婚後も、父母の間に一定の信頼関係が残っており、共同親権について双方が合意している場合には、大きな問題は生じにくいという。

「共同親権そのものに経済的メリットがあるわけではありませんが、『親権者である』という意識から、別居親が学費負担などに協力的になることを期待して選択するケースもあります。そうした事案は、4月以降に申し立てをして、すでに手続きが終わっています」

もっとも、それは制度によって関係が改善したわけではないと岡村弁護士は指摘する。

「もともと協力できる父母だからうまくいくのであって、共同親権の制度そのもが関係を改善したわけではありません」

●今後の焦点は家裁の運用

岡村弁護士は、今後の最大の焦点は家庭裁判所の運用だと話す。

「裁判所が高葛藤事案やDV・モラハラ事案に対して、どのような基準で共同親権の適否を判断していくのかが重要です」

特に重視すべきなのは、子どもの安全と生活の安定だという。

「実際に子どもを育てている親が安心して生活できることは、子どもの利益そのものです。

身体的暴力だけでなく、精神的暴力やモラハラも含めて評価しなければなりません」

そのうえで、制度導入による前向きな変化もあると話す。

「共同親権の議論を通じて、DVや虐待、精神的暴力が子どもに与える影響に注目が集まるようになったことです。

民法にもDVや虐待に関する考え方が新たに明記されました。裁判所には、その条文の趣旨を丁寧に運用してほしいと思います」

制度が始まってまだ3カ月。共同親権導入は、「父母が離婚した後もこどもの利益を確保すること」を目的としている。

岡村弁護士は「本格的な評価ができるのはこれから」としたうえで、「子どもの安全と利益を最優先にした運用が続くかどうかが問われている」と話す。

制度が実際にどのように定着していくのかは、今後の家庭裁判所の運用や実務の蓄積によって見極められていくことになりそうだ。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

この記事をシェアする

Googleトップニュースでフォロー

フォローの仕方はこちら
Add as a preferred source on Google

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

協力ライター募集詳細 情報提供はこちら