『模範六法』で戦う、異色のプロレスラー弁護士 横浜に根ざして活動「なぜか詐欺被害の相談が多いんです」
異色の弁護士レスラー。それぞれの仕事のきっかけは?
ーープロレスに憧れたきっかけを教えてください。
中学生頃から深夜に放送されていて見るようになって、面白いなと思って学校の教室や柔道場とかでプロレスごっこをしていました。そうしているうちに、大学生になって学生プロレスを始めて、リングにも立つようになって。
プロレスラーになったきっかけは、学生プロレス時代の先輩から「ちょっとやってみないか?」と誘われたことです。大学を卒業した後、司法試験に受かっていなくて無職だったんですよ。
ーー理路整然と喋って会場を盛り上げたかと思えば『模範六法』(※)で相手を殴る弁護士キャラは、非常に個性的です。どういうふうに今のスタイルが確立されていったんでしょうか?
自分は先にプロレスラーになったので、弁護士資格を取得したのはその後のことでした。最初の半年くらいは弁護士キャラを押し出さないでやっていたんですけど「面白くないな」「せっかくいいキャラづけができるのに、使わないともったいないよな」と思って、スーツを着てリングに上がったりするようになったんです。
『模範六法』を使うようになったのが、スーツを着始めてさらに3ヶ月後ぐらい。「これ面白いじゃないか」と思ってやってみて、実際にウケが良かったんで続けちゃったというとことです。
(※編集部注:三省堂が出版している六法)
ーー自分は辞書で誰かを殴った経験がないんですけど、やっぱり辞書で殴られると痛いものなんでしょうか?
たとえばすごい鍛え上げた体の人が放つパンチやキックと、僕みたいな中途半端な力の人間が『模範六法』を使って殴るのがどれぐらい違うかっていうと、そんなに違わないと思います。自分で普通に殴るよりは全然効くはずです。
ーーちゃんと凶器になっているんですね…しかも、その『模範六法』は三省堂から提供を受けているそうで。『弁護士の公式凶器』ってことですよね。
そうです。まあルール上は反則なんですけどね。この間も、殴ってそのまま倒れたんですぐにフォールを取りに行ったら、「いや、反則だからダメだよ」ってカウントを取ってもらえませんでした(笑)。三省堂は公認してくれてるんですけど、プロレスは公認してくれないんです。
ドラマきっかけで弁護士を目指すも、29歳まで続いた学生生活
ーーでは次に、弁護士を目指したきっかけを教えていただけますでしょうか?
中学生のときに学校の授業で旧横浜地裁に裁判傍聴に行ったことが、弁護士という仕事を意識するひとつのきっかけにはなりました。ただ、本格的になりたいなと思ったのはそれよりも後で、テレビドラマの影響。織田裕二さん主演の『正義は勝つ』と、役所広司さん主演の『合い言葉は勇気』という作品です。この2つのドラマに、すごく影響を受けました。
ーー先生は世代的に制度改革にも翻弄されたんじゃないかなと思います。
私が法科大学院を卒業したのは2009年でした。その年に受かっていた人は新63期になっていたんですけれども、そのときすでに『次の新64期からは給費制がなくなる』と言われていました。
ーーそれまで司法修習生は給与の支給を受けていたものの、それがなくなり、返済義務のある貸与制になってしまったんですよね。
結局、土壇場で64期までは支給を続けましょうということが国会で決まって1年間延長になりました。それで救われたのが64期だったんですが、わたしが受かった65期では2回目の奇跡は起こらず、貸与制になりました。
ーー過去のインタビューでは、その頃には公務員になり、プロレスを辞めることも視野に入れていたと語られています。かなり覚悟を持たれていたようですね。
そうですね。2011年当時はいわゆる『三振』すると、つまり3回不合格になると、ロースクールからやり直さないといけなかったんです。私は2回司法試験に落ちていて、年齢的にも29歳になっていたので、司法試験と並行して公務員試験も受けました。横浜市、東京都、あと裁判所事務官ですね。
ーー東大卒の学歴や、「弁護士兼プロレスラー」として活躍されている現在など、スペックだけを見るとスゴい人なのかと思いきや、そういう話を伺うと先生も悩み、苦しんでここまで来られたのかなと感じました。
たしかに僕は経歴は色々変わってるんですけど、本質的には凡庸な人間なんですよ。実際、こうやって話してみると特別なことはたぶん感じられないと思いますし、溢れ出る才気みたいなものがあって、こういう働き方をやってるわけでは全然ないんですね。
「今までにない弁護士像を目指す!」という気持ちはなくて…
ーー弁護士業やプロレス業の一方で、慶応大学で臍帯血(さいたいけつ)の研究をしているそうですね。
臍帯血は、赤ちゃんが生まれるときにへその緒から取れる血液のことを言います。以前は医療廃棄物でしかなく、無価値なものとされていました。しかし、幹細胞を作るのに必要な資材として非常に有用だと言われるようになってから、ものすごく価値のあるものになったんです。
しかし、様々な課題があります。臍帯血は生まれてくるときしか採取できないため、非常に貴重なものです。ですが、衛生管理や保管も難しく、環境も整っていません。人体の一部ゆえ通常の取引をしていいのかという倫理的な問題もありますし、新しくできた分野なので、法規制が全然進んでいません。その結果、闇のルートで販売をされる…ということが、実際にあったと言われています。
臍帯血を使った治療に関しても、医学的にもう確立されたものがある一方で、実験や論文などを通じて有用性・安全性が確かめられていないものも多くあります。そういった対応が進まないなか、2017年には表参道にあるクリニックから、無許可の治療をしたということで逮捕者まで出ました。
そういう状況だったため、「これはいかん」と考え、全国すべての出産を扱う医療機関に対して、「臍帯血の採取をやっているか?」「どういうところに引き渡したことがあるか」というようなアンケート調査を実施しました。相当貴重なデータになったと思います。
ーーもともと忙しいのに加えて、法律が追いついていない分野にも手を広げられるのはどうしてでしょうか?
正直なことを言うとつまらないんですけども、能動的に新しい分野を探していたわけではないんですよ。「何か新しいことやりたい!」と思っているのではなく、たまたま誘われたとか、そういう感じで流されて入ってるんですね。プロレスラー兼弁護士をやってるのもそうで。
ーーでも、誘う側としては、先生の人柄があったうえで声をかけているでしょうし、それに乗っかれるだけの体力・気力がないといけないですよね。
あとは、好奇心もあるかなと。すごく好きな言葉で、「興味あるんだったらやってみようかな、覗いてみようかな」っていうところはあります。そういう意味では、やるべくしてやってるのかもしれません。
今年の夏はビニールプールが大活躍
ーー休日の過ごし方について伺います。コロナ禍で過ごし方は変わりましたか?
そこまで変わっている実感はないですが、とは言え、できないことは増えましたよね、やっぱり。外出ができなくなって、家で過ごす時間がすごく増えました。なので、この夏はビニールプールが大活躍でしたよね。7歳と4歳の子供がいるので、ビニールプールで一緒にジャブジャブやっていました。
ーープロレスの練習は今ってどんな感じなんですか?
一応、週に1回道場で合同練習があるんですけど、サボりまくっています。サボりは前々からなんですけどね(笑)。
ーー弁護士は忙しい仕事ですもんね。
そうなんですよね。一応、事務所の隣にジムもあって、入会はしているんですけども、デルタ株が出てから行けていないですね。
ーー奥さんからプロレスを反対されていると過去のインタビューで何度も述べられていますが、2021年現在どうですか?
今まさにですよね。今日も試合ありますけども、内緒にしてますよね。薄々感づいてますけど。
ーー薄々感じてるっぽいけど止めないし、薄々感じられてるけど普通に試合に行くという関係性がすごい面白いし、ちょっと怖いです(笑)。
ごまかしごまかしやっています(笑)。
横浜に根ざした「マチベン」として働いていきたい
ーーどんな分野の相談が多いのでしょうか?
「これを打ち出したい」と意識してやってるっていう話はないんですけど、なぜか詐欺被害についてご相談をいただくことが多い気がしています。
たとえば「探偵事務所に依頼をしたものの、動いてくれずにお金を要求された」というケースや、「製品開発に出資したのにお金が返ってこない」ケースなど、そういう系のトラブルはなぜかよくご相談をいただいています。自分としては「なんでなんでしょうね?」という感じなんですけど。
ーーそれは先生が強そうだからじゃないですか?(笑)。
そうかもしれないですね。実際僕の試合を見たら、とてもじゃないけど頼もうと思わないかもしれないですけど(笑)。
ーー弁護士としての今後の展望は?
せっかくこの横浜駅のすぐ近くという良いロケーションでやっていて、実際ご依頼も地元のお客様から広くいただくので、やっぱりここに深く根を張っていきたいなと強く思っています。横浜市って実は意外と大きくて、18区あるんですけど、最近は土地勘がついてきて「○○区○○町」と言われると「ああ、あの辺だな」「こういう文化圏だな」と、地域の特色を含めてわかるようになったんです。そんな風に、人と人の結びつきのなかで仕事をしていきたい気持ちがあります。
ーー最後に、法律トラブルを抱えた人にメッセージをどうぞ!
神奈川県弁護士会所属、弁護士法人Next 横浜オフィスの弁護士川邉と申します。横浜駅のすぐ近くで開業して2021年でもう7年になります。横浜の地域に根ざした弁護士としてやっておりまして、一番、私が弁護士として嬉しいなと思うのが、相談に初めていらしたお客様が、まだ、問題はもちろん、相談を受けるだけでは解決しない、第1回目の相談の時に、「それでも相談してよかった」「来る前と比べて心が軽くなった」と少し笑顔になって帰られるときが、一番嬉しいです。
ぜひとも、お悩み事があれば、お気軽にご相談いただけたらと思います。「こんなこと弁護士に相談していいのかな」、そんなお悩みは必要ないので、ご心配なくご相談ください。