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巨額流出のコインチェック、補償による「強制的な利益確定」で高額課税?国税庁の見解は
画像はイメージです(sh2 / PIXTA)

巨額流出のコインチェック、補償による「強制的な利益確定」で高額課税?国税庁の見解は

仮想通貨「NEM」を取り扱う仮想通貨取引所コインチェックから巨額資金が不正流出した問題で、コインチェックは1月28日、NEMを保有する約26万人全員に対し、合わせて約460億円を返金すると発表した。補償時期は「検討中」で、返金の原資は自己資金だという。

仮想通貨そのものの信頼を大きく損なう今回の問題だが、それでも投資家の中には、将来的な「復活」を期待して自らが保有してきたNEMを持ち続けたいと考える人もいるだろう。にもかかわらず、保有するNEMの数に応じ、日本円でお金が戻ってくることになる。

国税庁は既に仮想通貨で得た利益は原則として、「雑所得」として課税する方針を示している。今回戻ってくるお金に対し、何らか課税されるおそれはあるのか。全資産が泡と消えるよりはマシでも、自らのタイミングではない「強制的な利益確定」で課税されてはたまらないーー。ネット上ではこうした不安の声が出始めている。

●国税庁「決まった方針はない」

仮想通貨の情報サイト「ビットコイン谷」には、国税庁に確認した結果として、「日本円で補償された場合は通常の仮想通貨と同じように雑所得として課税される」「補償金額から購入金額を引いた金額に課税される」「補償金がなければ税金が払えないという場合でも、救済措置はない」などという内容が掲載されている。

弁護士ドットコムニュースでは、こうした情報が正しいのか。国税庁の報道担当を通じ、1月29日に個人課税課に質問を投げかけたが、2月1日18時過ぎ、担当者から回答があった。

個人課税課の担当者によれば、「コインチェックの発表や各種報道により今回の事象が発生したことは承知しているが、いつ、どのような形で補償されるか確定的ではなく、現時点で方針を決めることはできない」という。流出発生は2018年1月であり、仮に確定申告に影響があるとしても翌2019年2月ー3月の確定申告時にどうするかという話だとも指摘した。

一方、上記のサイト「ビットコイン谷」で掲載された情報の真偽については、「どのような経緯で質問があったのか不明」とし、「現在決まっている方針はない」と重ねて述べた。

ただこのままでは、税の専門家でもない限り、先行きを読むのは難しい。そこで、山本邦人税理士に今回の問題について考え方を聞いた。

●戻ってくる「補償金」は非課税とみられる

ーーどのように考えればいいでしょうか

「税務的には、次のような取引の複合として考えられます。(1)預けてあったNEMが盗難される(流出する)ことにより、その時点の時価で損失額が決定(2)コインチェックに対する損害賠償請求権が発生(3)その損害賠償請求権の対価として、円による支払いがされる、ということです」

ーー「補償金」に対して課税されるのでしょうか

「投資家は損害賠償請求権を得ますが、所得税法(9条1項17号)により、一定の要件をみたす損害賠償金等は、損害の補填であり所得ではないなどといった考え方から非課税とされています。このため、今回の円による支払い(補償金)は損害賠償請求権の決済であり、所得ではないと解釈できます。つまり、補償金への課税はされないでしょう」

●「含み益」は雑所得とみなされ課税対象

ーー初期投資の額を上回る補償金を得る投資家もいると思いますが、それでも非課税ですか

「そうではありません。わかりにくいところなのですが、盗難(流出)時点の時価で利益確定と評価でき、含み益(値上がり分)は雑所得として課税されると解されます」

ーー投資家は利益確定をしたつもりがなくても、関係ないのですね

「はい。例えば単純化して以下のケースを考えてみましょう。含み益は800円となり、これが雑所得として課税されます。一方、受け取った補償金900円は非課税となります」

・NEMを200円で購入

・時価1000円の時に盗難(流出)

・補償として900円を受け取った

ーーいつ税金はかかってきますか

「今回の盗難(流出)が2018年に入ってからで、その時点での利益確定であれば、2019年の確定申告で納税する義務が生じます。特に高額の含み益がある方は注意しておく必要があるでしょうね」

(※2月1日18時半過ぎ、国税庁より回答があったため、その内容を追記し、一部修正しました)

【取材協力税理士】

山本 邦人(やまもと・くにと)税理士

監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。中小企業の財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。

事務所名:山本公認会計士・税理士事務所

事務所URL:http://accg.jp

(弁護士ドットコムニュース)

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