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ドリンクバーと「勘違い」してスープバーを利用、犯罪になってしまう?
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ドリンクバーと「勘違い」してスープバーを利用、犯罪になってしまう?

「スープバー、頼んでいないですよね?」。ファミリーレストランで食事している最中、勘違いした店員から、そんな指摘を受けたことに怒る投稿がネット上の掲示板で話題となった。

投稿者は、セットメニューを注文し、食事していたところ、店員から「スープバーは頼んでないですよね」と指摘された。相談者は、自分が勘違いしていたと思い、あわてて「すみません。差額は支払います」と告げた。ところがメニューを確認すると、そのセットメニューにはスープバーは含まれていた。相談者ではなく、店員の方が勘違いしていたのだ。

今回のケースはことなきを得たが、実際に、頼んでいないスープバーを勝手に利用してしまうケースはあるようだ。他の相談掲示板には、コーンスープを「ドリンクバー」だと思って飲んだところ、本当は「スープバー」だったと知って後から青ざめた体験が投稿されていた。

セットメニューに含まれていないスープバーを勘違いして利用してしまった場合、何か罪に問われる可能性はあるのだろうか。また、自分が頼んだメニューに含まれていないことを認識しているにもかかわらず、意図的に利用した場合はどうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。

●「勘違い」でスープバーを利用しても、犯罪にはあたらない

「まず、『セットメニューに含まれていないスープバーを勘違いして飲んでしまった』という場合、別途料金を取られるかどうかはさておき、刑法上の罪に問われることはありません」

尾崎弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。

「レストランなど飲食店で、最初から金を払うつもりもないのに飲食物の提供を受けることは、詐欺罪に該当します。

しかし、この場合はスープがセットメニューに含まれていると勘違いしているだけで、代金を支払う意思が認められるでしょう。そのため、詐欺を行う意思(故意)があるとはいえないからです」

勘違いなどの「うっかりミス」では刑事責任を問われないということだろうか。

「刑法で罰せられるべき犯罪の多くは、明確に過失犯を罰することが規定されているものは別として、『禁じられていることをあえて行う』という意思があること、つまり故意犯が原則とされています。

そして、詐欺罪には過失犯を処罰する規定はありません。そのため、『騙そう』という意思がなければ罰せられないのです」

●故意があるかどうかは、外部的な状況からも判断される

「一方、自分が頼んだメニューに含まれていないことを認識していながら、意図的に利用した場合は、代金を支払うつもりがないのに飲食したわけですから、レストランから料理をだまし取ったことになり、理論的には詐欺罪に該当します。

この場合、あとで代金を支払っても詐欺罪が否定されるわけではありません。このように、セットメニューに含まれていないものを飲食するというケースで、犯罪の成否は、外形だけではなく、その人の故意によって決まります。

ただ、どういうつもりであろうと料金に含まれていない料理を飲食した以上、相当する代金を支払う必要はありますし、故意があるかどうかは、外部的な状況や態度から判断されます。

内心の問題だからと言って、『分からないだろう』などと考えて不心得を起こすことは、厳に慎むべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

尾崎 博彦
尾崎 博彦(おざき ひろひこ)弁護士 尾崎法律事務所
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員

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