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2016年01月17日 11時37分

「パブリックドメイン」に谷崎潤一郎や江戸川乱歩の作品ーーどんな意味があるのか?

「パブリックドメイン」に谷崎潤一郎や江戸川乱歩の作品ーーどんな意味があるのか?
谷崎潤一郎の「春琴抄」

著作権が切れた文学作品などを公開する「青空文庫」で、1月から新たに、江戸川乱歩の「二銭銅貨」や谷崎潤一郎の「春琴抄」など、2015年で著作権保護期間が切れた作品が掲載されている。

青空文庫のウェブページでは、「2016年1月1日、新たに多くの作品が社会の共有財産に、つまりパブリック・ドメインとなる今日この日に、青空文庫は以下の13名の著作者による、13作品を公開いたします」とのコメントが掲載され、それらの作品を無料で公開している。

パブリックドメインになるということは、いったいどんな意味を持つことなのだろうか。著作権の問題に詳しい齋藤理央弁護士に聞いた。

●知的財産権による「制限」がかかっていない知的財産

パブリックドメインというのは、正式な法律用語ではありませんが、一般的に、ある知的財産を客体とする「知的財産権」が保護期間の経過などによって消滅するなど、その知的財産について法的に利用が禁止されていない状態を指しています。

知的財産権は、知的財産権者に独占的な利用権を与えることで、権利者を保護する法制度です。知的財産権は知的財産の利用を認められる権利のように考えられがちですが、その権利保護の本質は、権利者以外の知的財産権の利用を禁止する部分にあります。

誰かに知的財産権が与えられたということは、権利者以外の知的財産の利用が禁止されたことを意味します。このような「知的財産権による制限」がかかっていない知的財産を、一般に「パブリックドメインにある」等と言います。

●どのくらいの時間が経てば「パブリックドメイン」になるのか

著作権は、著作物を客体とする知的財産権です。著作権の保護期間は、著作者の死後50年と法律で定められています(著作権法51条2項)。著作者が法人や団体の場合など、作品を「公表」した時点を基準に、保護期間を計算する場合もあります。

期間の経過は、死亡日や公表日などの翌年の1月1日から起算します(著作権法57条)。そして、同年の12月31日を経過することで、1年が経過したものと計算します。

たとえば、今年の1月1日からパブリックドメインになる山川方夫さんは、1965年2月20日に亡くなっています。また、谷崎潤一郎さんは1965年7月30日、式場隆三郎さんは1965年11月21日に亡くなっています。このように、亡くなった日は別々ですが、同じ1965年に亡くなっているため、同時に1966年1月1日から期間の経過を起算します。

そして、同時に2015年12月31日に著作権の保護期間を経過したことになり、翌2016年1月1日からパブリックドメインとなるのです。

●パブリックドメインだからといって、何をしてもいいわけではない

期間の経過により、著作権は消滅することになります。より具体的には、著作物を客体として存在していた複製権、翻案件、公衆送信権などさまざまな権利(支分権)が消滅することになります。

パブリックドメインとなった作品を、自分のSNSやホームページを公開する、出版して販売するといったことや、作品の装丁などを自分でデザインして、書籍として発売することも可能だと考えられます。文学作品の映像化についても、翻案件は消滅していますので、著作権との関係では権利を侵害しません。

ただし、パブリックドメインになったからといって、作品をどのように扱ってもいいというわけではありません。著作権法では、著作者の名誉を害するような行為から保護する「著作者人格権」という権利が定められています。

作品を公表するかどうかを決める「公表権」や、むやみに作品を改変されないための「同一性保持権」、名前の表示方法を決める「氏名表示権」といった権利が認められています。

この著作者人格権自体は、著作者の死亡と同時に消滅するのですが、著作者人格権の侵害になるような行為は、著作者人格権と著作権の消滅後も、民事上一定の請求を受ける場合があります(著作権法60条、116条)。また、理論上は、永久に刑罰の対象になると考えられています(著作権法60条、120条、123条参照)。

ですから、SNSでの公開や出版をするような場合でも、著作者の氏名の表示は著作者が生前行っていたのと同じ表示で行うなど、気をつけるべき点もあります。

また、映像化する場合は、著作者の意を「害しない」範囲で映像化するなど一定の配慮が必要になります(著作権法60条但書)。氏名表示や公表されていない小説については公表にも留意する必要があります。

特にストーリーの改変は、著作者が望まないと判断される可能性が高いため、著作者の意を害する改変として違法になりやすいと考えます。

(弁護士ドットコムニュース)

齋藤 理央弁護士
西新宿中野坂上法律事務所弁護士。著作権など知的財産権法分野・損害賠償分野を得意分野として、知的財産権侵害、知的財産権に関する契約問題、ITと知的財産権、その他一般法務の相談・案件処理を行っている。なお、平成28年1月に事務所を練馬区に移転予定。
所在エリア:
  1. 東京
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事務所URL:http://ns2law.jp/
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