旅先の大阪で置き引きにあった男性が、警察・市役所などに相談したが、お金を借りることができなかったーー。そんなエピソードを描いた漫画がツイッターで話題になった。
この漫画によると、大阪で飲み会に参加したあとに立ち寄ったネットカフェで、携帯電話類以外をごっそり盗まれてしまったという。友達に電話をするも、貸してくれる人は見つからず、朝になって銀行や交番、市役所に行っても、たらい回しで取り合ってもらえなかったという。「交番のおっさんは、『2、300円なら貸せるけどな』とか言ってました」。どうやらお巡りさんは、「公衆接遇弁償費」という制度のことを言っていたようだ。
「公衆接遇弁償費」。男性が関東の自宅へ帰る旅費には全く足りなかったようだが、いったいどのような制度なのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。
●原則「1000円以内」を警察で借りられる
「公衆接遇弁償費とは、外出先で財布を盗まれたり、落としたりした市民に対して、警察が必要最低限の交通費を一時的に貸してあげるという制度です。1968年に警視庁の警ら部長(今でいう地域部長)が出した通達があり、警視庁ではこれに基づいて運用しています」
どんな時に貸してもらえるのだろうか。
「今回のような、外出先で所持金を盗まれたり、遺失した場合ですね。また、例えば行方不明だった要保護者を警察などへ運んだり、行路病人、交通事故などの負傷者をタクシーで病院に運んだりするときのタクシー代などにも適用されます。
借りるのは、警察署や交番のほかに、街中を走っているパトカーでも可能なんです。返済は、借り受けた警察署や交番に返済するのが原則ですが、借受者の居住地が遠隔地の場合は、警視庁管内の他の警察署や交番、パトカーに返済することもできます。
ですので、街中を走っている警視庁のパトカーを呼び止めて、『公衆接遇弁償費』を借りることができますし、返済するときも、警視庁管内の他のパトカーに返済することも可能なんです。意外に便利な制度といえるかもしれません」
想像以上に簡単な制度のようだ。
「そうですね。手続としては、緊急性のある場合を除き、借受願書(借受の申請書)に住所、氏名、職業、連絡先などを記入して申請を行います。借りられる金額も、それほど多くはありません。
交通費やタクシー代を一時的に立て替えるといった趣旨からして、原則1000円以内とされています。例外的に1000円以上の金額を貸してもらうためには、交番のお巡りさんの権限を越えるため、彼らを束ねる警察署の地域課長の決裁を経る必要があります」
澤井弁護士はこのように話していた。