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「求人詐欺」対策をめぐり議論「企業名もっと公表すべき」「固定残業代の明記を」
上西充子教授(左)と嶋﨑量弁護士

「求人詐欺」対策をめぐり議論「企業名もっと公表すべき」「固定残業代の明記を」

求人票の内容と実際の労働条件が違う「求人詐欺」や「ブラック求人」と呼ばれる虚偽の求人をなくすため、政府の労働政策審議会で「職業安定法」(職安法)の改正が議論されている。新たに罰則規定が盛り込まれる方針で、2017年の通常国会で審議される見込みだ。

これを受けて、労働問題にくわしい弁護士と教授らが集まって、職安法の課題を議論する座談会が10月6日、東京・千代田区の連合会館であった。

厚労省によると、2015年度にハローワークが出していた求人だけでも、求人詐欺が疑われるものについて約4000件の報告があったという。インターネット求人サイトの情報などを含めると、より多くの被害が出ていると考えられる。しかし、職業安定法は「虚偽の広告」や「虚偽の条件」を提示して労働者を募集することを禁止しているものの、実際に罰則が適用されたことはなく、現状では取り締まりが難しいとされる。

求人詐欺の問題点について、座談会に出席した嶋﨑量弁護士は、「労働市場では人手が不足している。人をどう集めるかが問題になっているのに、まっとうな会社が労働者をだます会社に人材を持っていかれている。社会全体に悪影響がある」と説明する。

●「求人詐欺を出した企業はもっと批判されて良い」

座談会を主催した連合によると、求人詐欺で多いのが「固定残業代」の被害だという。記載された月給の中に、あらかじめ残業代が含まれており、いくら働いても給料が変わらないというような場合だ。連合には、「求人票には月給19万円とあったが、初めての給与明細には基本給12万5000円、固定残業、他手当含む19万円と書かれていた」といった相談が多く寄せられている。

こうした被害の対策として、2016年から本格的にスタートした「若者雇用促進法」では、求人票に固定残業代の明示が求められるようになった。しかし、法政大学の上西充子教授は「(明示は)指針でしかなく、守っていないところも沢山ある」と法律の不備を指摘する。また、上西教授は「(若者雇用促進法の)対象は若者だけで、中高年には固定残業代を隠したらダメということになっていない」とも話し、職安法の改正で固定残業代の明示を義務化することが必要だとした。

一方、嶋﨑弁護士は、職安法の改正で新たに設けられる予定の罰則規定について「インパクトは強いが、お金がかかるし、慎重さもいる」と話し、実際の運用は「見せしめ的になる」と予測。規制と同時に、求人詐欺を行う企業を行政が積極的に公表することが重要だという。嶋﨑弁護士は「食品偽装をした会社は大きな非難を浴びる。ブラック求人(求人詐欺)を出した会社も同じように、批判されて良い」と、社会が求人詐欺を許さない雰囲気をつくることも大切だと訴えた。

(弁護士ドットコムニュース)

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