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映画館の「公害並の悪臭」で鑑賞を中断・・・チケット代を返金してもらえるか?
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映画館の「公害並の悪臭」で鑑賞を中断・・・チケット代を返金してもらえるか?

子連れで映画館に行ったら、臭くて吐きそうになった―—。インターネットのまとめサイトに、こんな書き込みが投稿された。

投稿者によると、息子を連れて映画館に行き、席に座って上映時間を待っていると、どこからか、ひどい臭気がただよってきたという。それは「ツンと鼻奥を刺激し吐き気を催す臭いと、ワキガのような苦い臭いが混じったような臭い」で、口呼吸でも喉の奥が刺激されて吐き気を催すほどだったそうだ。

臭いがしてから10分ほどで、息子が「臭くて吐きそう」と言いだしたため、投稿者は上映開始とほぼ同時に外に連れ出した。投稿者以外にも気分の悪くなった観客がいたらしく、「何アレ!無理なんだけど!」「臭すぎて公害」「吐きそう」と何人かが出てきたという。

投稿者は映画館のスタッフに事情を話したが、「対応は無理」とのことだった。息子の顔色が悪かったため、それ以上は食い下がることなく映画館を後にしたが、「安くもないチケット代」と「映画館価格の飲み物とポップコーン」のためにお金を払ったのに無駄になったと、納得いかない様子だ。

「こういった場合ってやっぱ映画館に対応求めるのっておかしかったのかな?」と、投稿者は疑問を呈している。今回のように、館内の悪臭で気分が悪くなって途中退出した場合、映画館にチケット代の返還を求めることはできるだろうか。鈴木淳也弁護士に聞いた。

●映画館は「快適に映画を鑑賞させる付随的義務」を負う

「映画館が、投稿者に対して負う本来の義務は、映画を上映し鑑賞させることであり、投稿者に座席を用意し、上映時間通りに上映することです。今回のケースでは、投稿者は映画館への入場を許可され、映画を鑑賞することはできます。

したがって、これだけで考えれば、映画館が本来の債務(義務)を果たしていない、つまり債務不履行である、とは言えないということになります」

とはいえ、映画は快適に鑑賞できてこそ楽しめる気もするが・・・。

「そうですね。映画館は観客に、快適に映画を鑑賞させるという付随的義務も負っているといえます。快適な鑑賞を妨げる事態が発生すれば、それを防止する義務があるでしょう。

そこで、投稿者としては、映画館側に『悪臭がひどくて映画の鑑賞に堪えられない』と伝えて状況を認識させ、そのうえで、臭くない席への移動や、他の上映時間への移動を求めることができると考えられます」

映画料金を返してもらうことはできないのか?

「映画館側が状況を認識していたにもかかわらず、実際に行うべき義務の履行を果たさなければ、映画鑑賞という目的が達成できなくなりますので、鑑賞料金の返還を求めることができるでしょう。

もっとも、投稿者が映画館側に何も伝えず、映画館側がその状況を把握できていなかったとしたら、責任追及は難しいと思います」

仮に、悪臭の発生源が他の鑑賞者だった場合、その人を退出させたり、入場を拒否することはできないのだろうか?

「映画館側が鑑賞規約として、『臭いが原因で鑑賞を断れる』『他の客の快適な鑑賞を阻害する荷物や鑑賞者自身の入場を拒否できる』などの定めを設けていれば可能かもしれません。しかし、そうした規約がない場合、拒否することは難しいでしょう

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

鈴木 淳也
鈴木 淳也(すずき じゅんや)弁護士 鈴木淳也総合法律事務所
第一東京弁護士会所属。大学時代は理学部に所属し、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし、多くの人と触れ合い、広く社会の役に立てる仕事に就きたいと考え、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、民事・刑事を問わず困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。

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