ネットで見つけた「プレミアム国産和牛」の焼肉食べ放題。期待して店を訪れたものの、出てきた肉はとても和牛とは思えないものだった──。
弁護士ドットコムに、こんな相談が寄せられました。
相談者が注文したのは、1人6000円ほどの和牛食べ放題・飲み放題コース。店はウェブサイトで「和牛食べ放題」を宣伝し、「A5和牛」との表記もあったといいます。
ところが、実際に提供された肉は、色も味も一般的な和牛とは違うように感じたそうです。
不審に思った相談者は、会計時、店主に和牛の仕入れ証明書を見せるよう求めました。しかし、店主は「提供したのは和牛だ」と主張し、提示を断ったそうです。
客は店に対して「本当に和牛なのか」を確認できるのでしょうか。また、和牛でなかった場合、返金を求めることはできるのでしょうか。
飲食店をめぐる法律問題にくわしい石崎冬貴弁護士に聞きました。
●「本当に和牛?」客が確認できる情報とは
──「A5和牛」「国産和牛」などとうたう店に対して、客は「本当に和牛なのか」を確認できますか。
客が店に対して「本当に和牛なのか」と尋ねること自体に、何ら制限はありません。
また、主に焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキを提供する飲食店には、牛の個体識別番号などを表示する義務があります。
具体的には、料理ごとに、店舗の見やすい場所やメニューに「個体識別番号」または「ロット番号」を表示しなければなりません。
ロット番号を表示する場合、問い合わせ先も表示する必要があります。客から問い合わせがあれば、そのロットに対応する個体識別番号を回答する義務があります(牛トレーサビリティ法15条4項、16条2項)。
──個体識別番号がわかれば、どんな情報を確認できるのでしょうか。
独立行政法人家畜改良センターの「牛の個体識別情報検索サービス」などを利用すれば、その牛の情報を調べることができます。
牛の種別(黒毛和種や交雑種など)、性別、生年月日、と畜年月日、出生地や飼養場所などの履歴を確認できます。
●店が確認に応じない場合はどうする?
──店側が個体識別番号を教えてくれないなど、確認に応じない場合はどうすればよいでしょうか。
店が個体識別番号などを表示していなかったり、問い合わせに応じなかったりする場合は、次のような窓口に相談、情報提供できます。
(1)消費生活センター
契約上のトラブルや表示への疑問について相談でき、事業者との交渉に向けた助言を受けられます。
(2)消費者庁・都道府県の景品表示法担当課
メニューなどに虚偽や誤認を招く表示があった場合、景品表示法違反の疑いがあるとして情報提供できます。
(3)地方農政局(農林水産省)
牛トレーサビリティ法に基づく個体識別番号の表示義務違反などについて、相談や通報ができます。
●和牛でなかったら返金は?刑事罰の可能性も
──もし「和牛」として提供された肉が、実際には和牛でなかった場合、店にはどのようなペナルティがありますか。また、客は返金を求められるのでしょうか。
和牛でない肉を「和牛」と偽って提供していた場合、複数の法律に違反する可能性があります。
たとえば、景品表示法の「優良誤認」に該当すれば、表示の是正などを求める措置命令や、課徴金納付命令の対象となることがあります。
さらに、悪質なケースでは、不正競争防止法違反や詐欺罪に問われ、拘禁刑や罰金などの刑事罰を受ける可能性もあります。
また、提供された肉が和牛でなかったと客観的に証明できれば、契約内容や具体的な事情によっては、客が店に返金を求められる可能性があります。
そのため、料理の写真やメニューの表記、注文履歴、領収書などを証拠として残しておくことが重要です。