高校生の息子から突然、「ホテルの未成年者同意書にサインして」と頼まれた──。
そんな母親の体験談がThreadsで注目を集めました。彼女と一緒に、ディズニーリゾートへ遊びに行くことは聞いていたものの、前日になって初めてホテル宿泊の予定を知らされ、しかも予約はすでに完了済み。
母親が反対すると、息子は「ホテルはキャンセルした」と説明しましたが、実際には予約は残ったままだったといいます。母親は保護者として看過できないとして、ホテルに「宿泊には同意しない」と伝え、息子たちも最終的に日帰りとなったそうです。
この投稿に対し、「高校生カップルの宿泊は認められない」「親への相談が先では」「まだ責任が取れる年齢ではない」といった声が相次ぎました。
未成年だけでホテルに宿泊することに法的な問題やリスクがあるのでしょうか。松本典子弁護士が解説します。
●未成年だけでもホテルに宿泊はできるが…
──未成年だけでホテルに宿泊すること自体は違法なのでしょうか。
未成年者だけでホテルに宿泊すること自体を禁止する法律はありません。旅館業法も、「未成年者のみ」であることを理由に宿泊を禁じてはいません。
もっとも、未成年者が保護者(親権者)の同意なく結んだ契約は、民法上、後から取り消すことができます(民法5条)。宿泊契約も例外ではなく、ホテルが保護者の同意書を求めるのは、こうした契約の取消しリスクを避けるとともに、未成年者を保護する趣旨からです。同意書の提出がない場合に宿泊を断る運用も、宿泊約款に基づく対応として適法と考えられます。
さらに、多くの都道府県の青少年健全育成条例では、保護者の同意なく深夜に青少年を連れ出したり、宿泊させたりする行為が規制されています。ホテル側も、保護者に無断の宿泊であると知りながら泊めた場合には、条例に抵触するおそれがあります。したがって、実務上は「保護者の同意がなければ未成年者だけでは泊まれない」ことが原則になっています。
なお、成年年齢は18歳ですので、同じ高校生でも18歳に達していれば法律上は成年です。この場合は、本人だけで有効に宿泊契約を結ぶことができ、同意書も原則として不要です。
●事故や病気になった時のリスクも
──未成年がホテルに宿泊するには、リスクもありそうです。
第一に、契約をめぐるトラブルです。保護者の同意のない予約は取り消しうる不安定なものですし、今回のケースのように、直前に保護者が反対した場合、キャンセル料の負担をめぐって混乱が生じることもあります。
第二に、安全面と監督責任の問題です。旅行先で急病や事故が起きたとき、未成年者だけでは医療上の判断などについて保護者の確認が直ちに取れず、対応が遅れるおそれがあります。また、宿泊先で設備を壊すなど他人に損害を与えた場合には、本人だけでなく、監督義務を負う保護者が損害賠償責任を問われる可能性もあります。
第三に、カップルでの宿泊に特有のリスクです。高校生同士であっても、妊娠や性的なトラブルなど、本人たちだけでは責任を負いきれない事態につながる可能性があります。相手が18歳以上である場合には、青少年健全育成条例違反(いわゆる淫行規制)の問題が生じることもあります。
同意書は単なる手続き上の紙ではなく、「保護者が子の宿泊を把握し、責任を引き受ける」という意思表示です。今回の母親のように、事情を知らされないまま形だけのサインを求められた場合に、同意せずホテルへ連絡した対応は、保護者として法的にも筋の通ったものといえるでしょう。