「サブスク」わかりにくさ解消へ国が本腰 公表されたガイドライン、実効性は?
消費者庁(リュウタ / PIXTA)

「サブスク」わかりにくさ解消へ国が本腰 公表されたガイドライン、実効性は?

音楽配信や動画配信サービスなどを定額料金で使い放題となるサービス「サブスクリプション(サブスク)」をめぐる契約トラブルを防ぐため、消費者庁が2月9日、2021年に成立した改正特定商取引法を踏まえ、「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」を公表した。

サブスクは音楽配信や電子書籍などデジタルコンテンツの利用から広まり、近年は飲食やファッションなどの分野でも導入する企業が増えている。

一方で、サブスクにおける請求トラブルも増加。国民生活センターによると、サブスクに関する相談が、2021年度以降、毎月500件程度が全国の消費生活センターに寄せられているという。

お試し期間として提供された無料サービス期間中に解約せず、有料プランに自動的に移行してしまったため、利用していないのに気がついたら数カ月分の料金が引き落とされていた——。そんな「解約忘れ」を経験したことがある人も少なくないかもしれない。

今回のガイドラインはサブスクにおける「解約忘れ」などのトラブル減少につながるだろうか。消費者問題に詳しい上田孝治弁護士に聞いた。

●トラブル防止に向け「最終確認画面」にメス

——ガイドラインは2021年に成立した改正特定商取引法を踏まえたものですが、どのような改正だったのでしょうか。

サブスクや定期購入に関するトラブルには、大きく2つのパターンがあります。

1つ目は、そもそも、無料あるいはお試し価格で申し込み、それだけで契約が終了すると思っていたところ、実際には、有料あるいは通常価格での契約に自動的に移行することになっていたという「契約期間や対価」に関するトラブルです。

2つ目は、契約を途中でやめられると思っていたところ、実際には解約が認められていなかったり、解約に条件がついていたり、解約方法が限定されていたなどという「解約」に関するトラブルです。

このようなトラブルが頻発していたことを受けて、2021年に特定商取引法が改正され、インターネット通販での契約申込み段階のいわゆる「最終確認画面」において、事業者に、一定事項の表示を義務付けるとともに、消費者を誤認させるような表示を禁止し、また、これらに違反する表示によって消費者が誤認して契約した場合には、契約を取り消すことができることにもなりました。

この改正は、通信販売の申込み段階における表示が、消費者が契約内容を最終的に確認する上で重要な役割を果たすことから、消費者が必要な情報につき一覧性をもって確認できるようにするためのもので、2022年6月1日から施行されます。

——具体的にはどのような表示になるのでしょうか。

サブスクに関係する規制については、法律および通達・ガイドラインにおいて以下のとおり定められています。

画像タイトル 消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」より

(1)最終確認画面で提供する役務の「分量」を表示

サブスクの提供期間や、期間内に利用可能な回数が定められている場合にはその内容を表示しなければなりません。

他方で、無期限のサブスクの場合には、その旨を明確に表示するとともに、あくまでも目安にすぎないことを明確にした上で、1年単位の総分量など、一定期間を区切った分量を目安として明示することが望ましいとされています。

また、自動更新のある契約の場合には、その旨も加えて表示する必要があります。

(2)最終確認画面で役務の「対価」を表示

無償または割引価格で利用できる期間を経て、期間経過後に有償または通常価格の契約内容に自動的に移行するような場合には、有償契約または通常価格への移行時期及びその支払うこととなる金額が明確に把握できるように表示しなければなりません。

そして、無期限のサブスクの場合には、あくまでも目安にすぎないことを明確にした上で、1年単位の支払額など、一定期間を区切った支払総額を目安として明示するなど、消費者が容易に認識できるように表示しておくことが望ましいとされています。

(3)最終確認画面で「契約の解除」に関する事項を表示

たとえば、解約の申出に期限があればその期限、解約時に違約金などの不利益が生じる内容となっている場合にはその内容を可能な限りわかりやすく表示しなければなりません。

もっとも、解約方法・時間帯などについて消費者が通常想定できないような限定がされている場合を除いて、解除に関する事項については、消費者が明確に認識できるようなリンク表示をし、リンク先に明確に表示する方法であっても問題はないとされています。

(4)最終確認画面で消費者を誤認させるような表示を禁止

画像タイトル 消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」より

具体的には、表示それ自体だけでなく、表示の位置・形式・大きさ及び色調、他の表示と組み合わせて見た表示の内容全体から消費者が受ける印象・認識等を総合的に考慮して判断されることになります。

したがって、たとえば、「お試し」や「トライアル」などと殊更に強調する表示は、一般的な契約と異なる試行的な契約である、または容易に解約できるなどと消費者が認識する可能性が高くなりますので、これに反して、実際には契約の継続が義務づけられていたり、容易に解約できなかったりする場合には、誤認させるような表示にあたる可能性が高くなります。

また、実際には解約条件等が付いているにもかかわらず、「いつでも解約可能」などの表示をした場合には、消費者としては、文字どおりいつでも任意に無条件で解約できると認識するのが通常ですので、誤認させるような表示にあたる可能性が高くなります。

●「気づきにくい」表示由来のトラブル減少に期待

——ガイドラインは「解約忘れ」などのトラブル減少にどれほど効果があるのでしょうか。

今回の改正は、サブスクの契約期間や対価(有償契約や通常価格での契約への移行時期など)、解除といった、トラブルの要因となっていた事項について、最終確認画面で、消費者が一覧性をもって確認できるように表示させるというものです。

特に、「お試し」とか「いつでも解約可能」といった消費者へのアピール文言がある場合には、消費者が特に勘違いしやすい表示になりますので、それを払拭するだけの表示が最終確認画面で求められることになります。

したがって、今回の改正によって、従来散見された「よく画面を見れば消費者に不利な内容も記載されているけど、注意して見ておかないと気づきにくい」といった類いのトラブルの減少が期待できます。

——それでもなお「解約忘れ」が生じた場合、消費者は支払うほかないのでしょうか。

今回の改正に基づく規制に従った最終確認画面となっていたにもかかわらず、消費者がそれを漫然と見落としていたり、単純に解約を忘れていたような場合は、契約で定められたとおりに料金の支払いをしなければなりません。

しかし、最終確認画面が規制に違反するような表示になっていたことで、消費者が勘違いをして契約した場合には、契約を取り消すことができるというルールが改正によって明記されましたので、その場合は料金を支払う必要はありません。

また、サブスクや定期購入は、「入りやすく出にくい」という場合が多く、解約方法が著しく限定されているようなケースもありますが、仮に、解約方法に関する表示が特定商取引法の規制に従って適正になされていたとしても、そのような解約方法の限定自体が消費者契約法により無効となって、解約が可能になることもあります。

プロフィール

上田 孝治
上田 孝治(うえだ こうじ)弁護士 神戸さきがけ法律事務所
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題、不動産・マンション管理法務に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。

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