子どもが3歳になり時短勤務が終わった途端、早速「土日の部活に来て欲しい」と言われたーー。弁護士ドットコムニュースの「LINE@」に、現役の私立高教員(40代男性)=宮城県仙台市=からこんな情報が寄せられました。
男性はこれまで妻と手分けして、保育園の送り迎えをしたり、子どものご飯を作ったりしてやりくりしていました。11月末に定時から30分〜1時間半ほど早めた育児短時間勤務が終了しましたが、教員全員が就くことを強制されている「部活顧問」への要請が強まってきたといいます。
男性は今年度、運動部の副顧問を任されました。これまで平日の練習はもう一人の顧問などにお願いし、休日の試合の引率などを担当してきました。土日には特別勤務手当がありますが、何時間働いても2700円しか払われません。
短時間勤務をしている教員は複数人いるため、周りから何か言われることは幸いにもありません。しかし、管理職である校長や教頭からは「土日は部活できるでしょう」と言われ、勤務時間外に手当なしで行われる補習授業を拒否したところ「次休んだら、時季変更権を使ってでも働いてもらう」とも伝えられました。
また、この学校では、就学前の子どもがいる場合、時間外労働の制限を受けることができますが、それについても「育児による時間外労働の制限の書類を取り下げてほしい」と説得されたといいます。
「私にとって育児に参加することは当たり前だと思うので、時短勤務をとっています。学校は子どもたちに法律の大切さを伝える立場なのに、子どもにはいい顔をして実際は職員に冷ややかな目を向けています」(男性)
●不当な残業「親子のかけがえのない時間を奪う行為」
法的にはどのような問題があるのでしょうか。
高木良平弁護士は「私立高教員であれば、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の適用はなく、通常の労働者と同様に労働基準法が適用されて、時間外手当を請求することができる」と話します。
また、土日の「特別勤務手当」が「何時間働いても2700円」である点も問題だといいます。本来、時間外手当は、通常の賃金よりも割増しした賃金を支払う必要があるためです。
「時間外手当の賃金は、法定休日であれば1.35倍になります。仮に、通常の賃金が1時間1000円程度として労働時間が2時間程度を大幅に超えているのに、一律2700円というのであれば問題があります。ましてや『勤務時間外に手当なしで行われる補習授業』を強要するなんて言語道断で、学校側の対応は違法なものと言わざるをえません」(高木弁護士)
自身も子育て真っ最中の高木弁護士は「父親に不当な残業を強いてその労働力を搾取する行為は、ひいてはそのパートナーの労働力を搾取し、親子のかけがえのない時間を奪う行為です」と話します。
「幼い子供がいる場合、その子と過ごす時間は、親にとっても、子にとってもかけがえのないものです。ブラックな職場を野放しにしていては、日本の少子化が止まることはないでしょう」
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