弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 労働
  3. 育休から復帰2カ月、夫の転勤で退職願 職場は「辞めるまで減給」の意趣返し
育休から復帰2カ月、夫の転勤で退職願 職場は「辞めるまで減給」の意趣返し
画像はイメージです(よっし / PIXTA)

育休から復帰2カ月、夫の転勤で退職願 職場は「辞めるまで減給」の意趣返し

育休復帰から2カ月後に退職願を出したら減給されました。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられた。「夫の急な転勤が原因」で、会社を退職せざるを得なくなったそうだ。

退職の意向を伝えたところ、社長の独断で、退職までの期間の給与を減額されてしまったという。「育休明けで退職するというのは、良くない事と思っています」というが、一方で給与を減額されることにも疑問があるという。

今回のように、退職のいわばペナルティーとして、会社が一方的に給与を減額することは許されるのだろうか。浅野英之弁護士に聞いた。

●育休明けの退職、法的な問題はナシ

ーーそもそも育休明けの退職に、法的な問題はあるのでしょうか

「育児休業(育休)が明けて復職した後、2カ月後に退職をすることも、法律的には何ら問題ありません。

『育休をもらって、すぐに退職するのは気が引ける』という人もいるかもしれませんが、育児休業は、育児・介護休業法という法律で認められた労働者の権利であり、会社の恩情ではありません。

育児休業中に、会社から手当などをもらっていたとしても、育児休業後の退職を理由に返金を迫られたり、損害賠償を請求されたりすることもありません」

ーーその人が復職することを前提にしていた会社側としては、心中、穏やかではないかもしれません

「ご家庭のライフプランは人それぞれです。出産直後は『仕事を長く続けたい』と考えて育児休業(育休)を取得したとしても、育休明けにすぐ退職せざるをえなくなるご事情も人それぞれなのではないでしょうか。

お子さんを預ける保育園が見つからないとか、面倒を見てくれるはずだったご両親がお亡くなりになってしまったなど、様々な事情があるはずです」

●減額分の賃金、請求しよう

ーーでは、今回のケースでは、社長の対応には問題があるということですね

「育児休業(育休)は法律で認められた労働者の権利ですから、『育休を取得したこと』を理由に減給することは不当な処分です。相談者は、減額分の賃金を労働審判、訴訟などの方法で請求することができます。

また、今回のご相談の場合、減給の理由は『育休を取得したこと』『退職を予定していること』に2つが含まれるのではないかと考えられますが、給与額は労使間の合意で決まっているものですから、退職を予定しているという理由だけで一方的に減額することもできません。

会社側としては、労働者のご家庭のライフプランにも配慮し、早め早めにじっくり話し合いをしておくという姿勢が必要だったのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

浅野 英之
浅野 英之(あさの ひでゆき)弁護士 弁護士法人浅野総合法律事務所
離婚・交通事故・刑事事件・相続など個人のお客様のお悩み解決実績、相談件数を豊富に有するほか、労働問題を中心に多数の企業の顧問を務める。銀座駅(東京都中央区)にて、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立、代表弁護士として活躍中。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする