スルガ銀パワハラ地獄「ビルから飛び降りろ」「お前の家族皆殺し」 弁護士が「明確に違法」と断言
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スルガ銀パワハラ地獄「ビルから飛び降りろ」「お前の家族皆殺し」 弁護士が「明確に違法」と断言

シェアハウス「かぼちゃの馬車」など不動産への不適切融資問題で、スルガ銀行への信頼は大きく損なわれた。このほど第三者委員会がまとめた調査報告書によると、営業現場に深刻なパワハラや法令違反と疑われる事態が蔓延している様子がうかがえる。

●社員休職・退職したら、「追い詰め方を自慢」する職場環境

報告書では第三者委が実施した行員アンケートを紹介。営業成績が伸びないことについて、上司からどのような厳しい叱責を受けたことがあるか複数の行員の声が紹介されている。抜粋すると以下のとおりだ。

・数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた

・毎日2ー3時間立たされて詰められる、怒鳴り散らされる、椅子を蹴られる、天然パーマを怒られる、1カ月間無視され続ける等々

・休み前金曜日に、「月曜までに案件とってこい」などの指示

・毎日怒鳴られ昼食も2週間くらい行かせてもらえず、夜も11時過ぎまで仕事をさせられて体調が悪くなり、夜眠れなくなって、うつ病になり銀行を1年8カ月休職した

・数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた。

・休職や退職に至ったら、営業推進を一生懸命に行った結果だと肯定し、その数や追い詰め方を自慢し競い、賞賛されるような状況にあった

・チーム全体を前に立たせ、できない理由を言わされた。2時間以上にのぼり支店の社員の前で給与額を言われ、それに見合っていない旨の指摘を受け、週末に自身の進退(退職)を考え報告を求められた

上記の声を読むだけでも「地獄」のような職場環境が想像されるが、実際このような職場環境が事実なら、どのような点が法的に問題となるだろうか。労働問題に詳しい河村健夫弁護士に聞いた。

●刑法上の犯罪行為伴うパワハラ

ーー今回の第三者委員会による報告についてどう感じましたか

「今回発表された、スルガ銀行第三者委員会による報告内容を前提とする限り、同行内でのパワハラ行為は『完全にアウト。明確に違法』です。

パワハラとは何か。厚労省『円卓会議』ではパワハラの概念を『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』と規定し、6つの具体的な「類型」を示しますが、法的に明快な定義は今のところありません。

パワハラにあたるかどうか判断が難しい理由は、「業務上必要な指導」と「違法なパワハラ」との区別がしにくいことです」

ーー「明確に違法」と評価できるのはどうしてでしょうか

「理由は、暴行等の刑法上の犯罪行為を伴っているためです。『ものを投げつけられる』『首を掴まれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った』などは暴行罪、『お前の家族皆殺しにしてやると言われた』などは脅迫罪に該当します。

刑法上の犯罪を伴わないと実施できない『業務上必要な指導』などはあり得ませんから、この1点をもってスルガ銀行のパワハラは違法であり悪質です」

ーーこうしたパワハラは偶発的なものではないようですね

「そうですね。問題の根深さは、このようなパワハラが偶発的なものではなく、組織的風土というべき状態に至っていたことです。

スルガ銀行では、『パーソナルバンク部門』が利益の大半を稼ぎ出しており、同部門を統括する執行役員が支店長クラスを集めた会議で営業目標を達成するように『恫喝』し、融資を審査する審査部人事にも介入しました。営業成績が振るわない支店長は会議に出席させずコールセンターで若手と一緒にテレアポをさせるなど、屈辱的な扱いをしました。

こういったパワハラを受けた支店長クラスは、現場の行員にそっくりそのままパワハラを行い、地獄のような職場を生み出しました」

●自分の身を守るため転職を、できればパワハラ証拠集めも

ーーこのような違法なパワハラを受けた行員は、どうすればいいのでしょうか

「率直に言えば、転職をすることです。理由は、働いている人の生命や健康こそが最優先に守られるべき利益だからです。第三者委員会でもパワハラによりうつ病に罹患したケースが報告されていますが、その『被害者』に銀行が補償した事例は見当たりません。パワハラが『組織的風土』のレベルにまで至ると是正するのは困難ですから、まずは自分の身を守ることが大切だと思います。

なお、スルガ銀行には内部通報窓口も設置され、パワハラの被害通報もありましたが改善されていません。この事実も、パワハラが『組織的風土』のレベルに至った際の被害回復の困難性を示しています」

ーー自分の身を守るために退職する行員はどのようなことをすべきでしょうか

「はい。退職する前に、ぜひ実行してもらいたいことがあります。それはパワハラの証拠集めです。暴言をICレコーダーで録音する、メールをプリントアウトするなどの方法でパワハラの証拠を保全しましょう。

退職後に健康や気力を回復し、まともな状態で「考える」ことができるようになったとき、その証拠を使って法的措置を取るか、取らないかを決めることができます。パワハラにより追い詰められた状態で「証拠を保全」するにはエネルギーを必要としますが、その後のことを考えるとぜひ実行してもらいたいです。

証拠が残っていれば、スルガ銀行におけるパワハラの立証は極めて容易です。刑法上の犯罪被害を発生させる悪質な行為ですし、従業員の人格に及ぶ誹謗中傷も頻繁になされていますから、加害者たる上司に対して不法行為に基づく賠償請求を、勤務先である銀行に対しても使用者責任または安全配慮義務違反に基づく賠償請求が可能です」

●傍観した管理職も責任問われる可能性

ーーところで、パワハラが横行する職場で傍観していた一般行員の同僚に対して責任追及をすることはできるのでしょうか

「結論から言えば、一般行員に対する賠償請求は困難です。法人(銀行)は従業員に対する安全配慮義務として『パワハラを発生させない良好な職場環境を保持する』義務を負います。しかしながら、『法人』は目に見えず手で掴むこともできない『実体のない存在』ですから、実際に当該義務を果たすには人事部長などの手を借りるしかありません。

このように法人の義務を現実に実施する人を『履行補助者』と呼んでいます。パワハラを傍観した場合に賠償責任を生じうるのは原則として『履行補助者』であり、一般行員が『履行補助者』に該当することは通常ありません」

ーーでは、傍観した管理職の責任はどうなるのでしょうか

「職場の組織体系にもよりますが、課長級以上の役職者であれば『履行補助者』に該当する可能性が高いので、管理職が傍観していた場合に法人の責任を発生させる根拠となりますし、程度によっては管理職の個人賠償責任も問われます。

管理職の職責や所掌、パワハラの悪質性、被害の確実性などにもよりますが、人事課長や総務課長が別の管理職による『壁に顔を押し付け、壁を殴る』などの行為を現認しつつ放置したのであれば、個人責任を問われても文句は言えないでしょう」

ーー上からパワハラをされ、下に対してパワハラをしてしまう管理職はさらにやり切れない部分があるのでしょうね

「はい。スルガ銀行のケースを検討すると組織で働く場合のやり切れなさが浮かび上がります。例えば、支店長の立場に目を移してみると、一方では執行役員によるパワハラの『被害者』でありながら、一般行員に対するパワハラの『加害者』にもなっています。

まさに悲劇的な立場に置かれるわけで、その人の生活を考えたときに『転職』という選択肢が容易に選び得ないこともよくわかります。これが、パワハラが『組織的風土』にまで至った場合の困難さです。転職せずにその風土に立ち向かい、解決を目指すには、自分が『半沢直樹』になることは不可能である以上、労働組合などの集団的労使関係を利用するしかないと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

河村 健夫
河村 健夫(かわむら たけお)弁護士 むさん社会福祉法律事務所
東京大学卒。弁護士経験17年。鉄建公団訴訟(JR採用差別事件)といった大型勝訴案件から個人の解雇案件まで労働事件を広く手がける。社会福祉士と共同で事務所を運営し「カウンセリングできる法律事務所」を目指す。大正大学講師(福祉法学)。

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