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流行りの「シェアサイクル」で通勤、移動中に事故 労災になる?
シェアサイクルの駐輪場(東京・港区)

流行りの「シェアサイクル」で通勤、移動中に事故 労災になる?

サービス提供からわずか数年で、自転車のシェアリングサービスは都心部の街並みに溶け込んでいる。

東京・港区のIT系企業に勤務するJ子さんは、その利便性にひかれて利用する1人だ。「月会費2000円の費用で、30分以内の利用は無料です。電車を使うよりも安くなるので、ほぼ毎日、通勤以外にもランチや仕事中の移動に利用しています」と話す。

J子さんが利用するのは、港区、渋谷区など東京都内9区で利用可能な自転車シェアリングだ。勤務先は、交通費を実費ではなく、月に一定額を支給する制度のため、交通費を不正に取得しているわけでもない。自転車通勤も認められている。が、J子さんには気になることがあるそうで、その不安を、こう打ち明ける。

「通勤や仕事中の移動で、この自転車を利用すると、労災対象になるのでしょうか?」

J子さんのようなシェアサイクルの利用者が、通勤や営業先への移動中に負傷した場合、労災は認定されるのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。

●「通勤災害になる」

「結論から言えば、就業中の取引先への往訪は業務上災害に、会社へ届け出た通勤経路や方法として合理性があるならば、通勤災害ともなり得るでしょう。

一点気をつけるべきは、通勤時に途中で寄り道したり、経路を逸脱したりすれば、通勤災害とならない場合もあることです。ただ、これはシェアサイクルの利用だからではなく、一般の通勤災害をめぐる従来からの判断によるものです」

もし、会社側が禁止していたらどうか。

「就業中の業務のための移動について言えば、会社が禁じていたから業務上災害ではない、とは言い切れません。あくまでその業務に起因したかどうか、という基準で判断されると思います。ただし、懲戒事由となることは考えられます。

ただし、通勤途上の場合は、通常の方法に該当せず、通勤災害と認めてもらえないリスクがありますね。

しかし、通勤途上の利用までを禁じるような勤務先の規則は、そもそもその有効性に疑問を差し挟む余地もあります。就業時間外の個人の自由をどこまで会社が規制できるかという観点から言えば、会社に何らかの不利益を与えるおそれもないような状況ならば、禁止は無効と判断される余地もありますね」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

今井 俊裕
今井 俊裕(いまい としひろ)弁護士 今井法律事務所
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。

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