「会社の食堂でノンアルコールビール飲んでただけでクビになりそうなんだが」。こんなタイトルの2ちゃんねるのスレッドが11月に話題を呼んだ。
投稿主によると、昼休みに会社の食堂でノンアルコールビールを飲んでいるのを職場の上司に問いただされ、叱責された。その日は帰宅させられ、欠勤扱いになったという。投稿者は「コレ俺が悪いのか? かなり上にまで報告されててクビ確定っぽいんだ」と書き込んでいる。
この投稿主は、酒を飲むのは問題だと思うが、あくまで「ビールに似た味のジュース」を飲んだことに過ぎないのに、クビはおかしいのではないかと考えているという。
イタリアでは、仕事の合間のランチでもワインをたしなむことがあるというが、日本ではノンアルでもダメなのだろうか。また、実際に「お酒」を飲んでいたら、どうだろうか。労働問題にくわしい澤藤亮介弁護士に聞いた。
●昼に1杯飲んで解雇は「不当」
「雇用形態が不明ですが、いずれにせよ、昼食中にノンアルコールビールを飲んだことのみをもって即解雇というのは解雇権の濫用となり、不当解雇になるでしょう」
澤藤弁護士はこう述べる。では、「ノンアル」ではなく、勤務時間中にアルコールを飲んだらどうだろう。
「もしこれが通常のビールであったとしても、昼食中の1回の飲酒のみを理由とする解雇も、懲戒処分としては行き過ぎです。同様の結論になるかと思われます」
軽く一杯のんだ程度でクビにするのは、行きすぎということだ。
●解雇は従業員にとって「死刑判決」
「現在の労働法制においては、雇い主の解雇権は厳しく制約されています。客観的合理的理由のない解雇は原則無効とされています(労働契約法16条)。
言うまでもなく、解雇は、従業員の将来の生活を脅かすいわば『死刑判決』のようなものです。
たとえ、給与を払う立場の雇い主であったとしても、自由に解雇権を行使できるものではありません。
不当解雇は解雇そのものが無効となるだけではなく、不法行為として雇い主に損害賠償義務も発生させます」
今回のようなケースは、どう考えるべきだろう。
「本件のような行為の場合、仮に雇い主側が『社内の秩序を乱すような行為』と判断するようであれば、まずは軽い懲戒処分である口頭または文書での戒告処分程度にとどめるべきです。
それでも繰り返すようであれば、その時点で初めて、より重い処分を検討すべきでしょう。
そのような『プロセス』を経ることなく、いきなり最も重い処分である懲戒解雇とすることは、客観的合理的理由のない解雇となり、無効な不当解雇と判断されるでしょう」
澤藤弁護士はこのように指摘していた。