町役場の一般職員同士が結婚したら、夫婦どちらかに退職を求めるーー。福井県池田町でそんな慣例があると毎日新聞(12月13日)が報じた。
毎日新聞によると、採用した職員に、服務規定の順守などを定めた誓約書への署名を求めており、その際に人事担当者がこの慣例を伝えているという。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、ある女性が同じ会社の従業員同士で結婚することを上司に報告したところ、「慣例でどちらかが店舗を移動するか、受け入れ先がなければ退職だ」と通達されたという相談が寄せられている。
池田町の例など、一部の職場では慣例として退職勧告が行われている実態があるようだが、こういった慣例は憲法の保証する「婚姻の自由」の侵害にあたらないのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。
●「慣例」であっても強制させられる状況であれば違法になる
憲法の保証する「婚姻の自由」の侵害にあたらないのだろうか。
「慣例によってどうしても退職せざるを得なくなるならば憲法違反のおそれが大きいと思います。公務員にも労働者としての基本的な権利は保障されますし、また、婚姻の自由(憲法24条)があります。
そうすると、婚姻することによって職員としての地位を失うという不利益を課されるのは、婚姻の自由の侵害ということになります」
池田町ではあくまで「慣例」ということだった。
「池田町の『慣例』は法律上の強制ということではないようですから、職員が頑として譲らなければ退職しなくてもいいのかもしれません。退職する人は、あくまで自主的な退職だから憲法の問題にはならない、ということになっていると思われます。
しかし、自主的な退職を勧める、いわゆる『退職勧告』というのも、たとえば複数回、長時間にわたって退職するように言い続けるなど、実際上辞めざるを得ないように仕向けるものであれば、違法になることがあります。したがって、『慣例』であっても実際上職員が婚姻を理由に退職を強制させられる状況にあるとすれば憲法違反のおそれがあります」
民間企業ではどうなのか。
「民間の職場の場合、憲法は直接適用されるわけではありませんが、婚姻だけを理由にどちらか一方を退職に追い込むような状況があれば、やはり、その『退職勧告』は違法になることが多いと思われます。
特殊な例外として、婚姻している男女が一緒に居てはどうしても仕事にならない職種・職場ならば、一方が退職するのもやむを得ないことがあるかもしれません。ただ、通常の事務や店舗スタッフなどの場合に、夫婦が一緒であればどうしてもダメということは想定しにくいように思います」