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学歴も前科前歴も「同じ先入観」法学部なしから司法試験合格、福島大卒の弁護士が“学歴いじり”に思うこと
舛田正弁護士(本人提供)

学歴も前科前歴も「同じ先入観」法学部なしから司法試験合格、福島大卒の弁護士が“学歴いじり”に思うこと

学歴をテーマにしたYouTubeチャンネル「wakatte.tv」の出演者が、福島大学を取り上げた動画で、放射能研究について「福島大には触らせたくない」と発言し、批判を集めた。

動画はその後、非公開となり、出演者は謝罪した。

福島大学には法学部はないが、卒業後に法曹の道へ進んだ人もいる。その一人が、東京で活動する舛田正弁護士だ。

行政社会学部を卒業後、旧司法試験に合格し、現在は刑事弁護を中心に実務にあたっている。

学歴で人を見ることについて、舛田さんは刑事弁護の経験から、こんな言葉を口にした。

「学歴も前科前歴も、同じ『先入観』なんですよね」

今回の発言をどう受け止めたのか。そして、自身にとって「福島大学卒」という学歴はどんな意味を持っているのか。舛田さんに聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●「下品な芸」だが、越えてはいけない線がある

舛田さんは、学歴をからかう表現そのものを全否定するわけではない。

「率直に言えば、だいぶ下品な芸だとは思います。ただ、一般論として言えば、そういうものは今までもあった。一概に全部ダメだという話ではないだろうと思うんです」

では、今回は何が違ったのか。

舛田さんが指摘するのは、福島大学が原発事故や放射能に関する研究に取り組む背景だ。原発事故が起きた福島にある大学として引き受けてきたテーマであり、単純に偏差値の物差しで語れるものではないという。

「そこにまったく無配慮で、考えが及ばずに『触らせたくない』という言い方をした。要は、『頭の悪い大学』に難しいことをやらせたくない、という趣旨でしょう。冗談にしていいところと、しちゃいけないところはあります」

●家を出たくて選んだ「個人寮のある国公立」

動画は、偏差値をもとに大学をランク付けし、福島大学を「国公立最下位」として取り上げていた。

一方、舛田さん自身の大学選びに、大学の「格」や偏差値へのこだわりはほとんどなかった。

東京都八王子市の出身で、2002年に受験・入学するまで福島を訪れたこともなかったという。当時は特に志望する職業もなく、大学は現実的な条件を重ねて選んだ。

まず一人暮らしをするため実家を出たい(から、実家からは通えない距離の大学)。進学先は国公立。そして、安く暮らせる学生寮があり、できれば個室がいい。

条件を絞り、関心のあった社会学を学べることや、何かあったときにはその日のうちに実家に帰れる距離であることなどを加えていくと、福島大学が残った。

●憲法の授業で「法律」の見え方が変わった

法学部はなかったが、公務員や教員を目指す学生が多く、法学の授業もあった。

大学ではサークル活動に打ち込んでいた舛田さんだったが、憲法の授業をきっかけに、法律に対する見方が変わったという。

「法律って、基本的にルールだから『個人が従わされるもの』といったイメージでしたが、憲法の講義を聞いて、公権力と戦って不当な人権侵害を救済できる『個人が武器として使えるもの』なのだという発想に興味を持ちました」

「サラリーマンは向いていない」と就職活動はせず、2006年の卒業後に司法試験の勉強を開始。2008年に旧司法試験に合格した。

偏差値や学歴を意識せずに選んだ大学で、その後の人生を決める「出会い」があったわけだ。

●司法試験を突破した後、学歴はどこまで関係する?

では、法律家の世界で「学歴」はどれほど意味を持つのだろうか。

高度な言語能力や事務処理能力が求められる以上、「最低限必要な能力はある」と前置きしたうえで、舛田さんはこう話す。

「ロースクール、司法試験、二回試験(司法修習の修了試験)でフィルタリングされてしまうので、その後の人について、学歴はあまり関係がない。そこを突破している時点で、一定の能力があるでしょうという見方だと思います」

もっとも、「なんで福島大学?」「なんで法学部のない大学から?」と聞かれることはよくあるという。

それでも、少なくとも弁護士として働く中で出身大学によって序列をつけられていると感じたことはない。学歴の話が出るとしても、「飲みの席の、酒の肴」くらいだという。

現在では、理系学部出身など、法学部をルーツとしないで、それぞれがバックグラウンドを実務に生かしている弁護士も少なくない。

●学歴も前科前歴も、同じ「先入観」

弁護士になって15年。舛田さんは、学歴によるレッテル貼りを、刑事弁護の現場で目にする「先入観」と重ねて考えている。

「レッテルというか、先入観なんですよね、学歴というのは。『こんな偏差値の低い大学だからだろう』とか、逆に『東大、京大だから頭でっかちだろう』とか。前科前歴で言えば、『こんな前科があるんだから、粗暴だろう』とか」

当番弁護や国選弁護では、限られた情報しかない状態で、初めて接見室で本人と顔を合わせることも多い。ある程度の「見立て」を持ってしまうこと自体は避けがたい。

しかし、実際に会ってみると、その見立てはよく外れるという。

逮捕時のニュース映像を見て「ふてぶてしいな」と感じていた人が、接見してみると「気の弱そうなおじさんだな」と印象が変わることもある。

「先入観や偏見を持って決め打ちして思考停止すると、得られるものもなく、誤解も生まれやすい。最終的には、虚心坦懐に目の前の人をちゃんと見ることが大事なのかなと思います」

●「やりたいことがやれていればいい」

最後に、大学選びを控える受験生へのメッセージを聞いた。

「その大学に入りたくて入ったのなら、偏差値が高かろうが低かろうが関係ない話じゃないですか。そして、大学でも、仕事でも、やりたいことがやれていればいいわけです。自分がどうあるか、それだけのこと」

福島大学を卒業したことが「枷(かせ)になると思ったことはない」という。大学時代にバンドを組んだ友人とは、今も連絡を取り合っている。

「卑下していることはまったくないし、恥ずかしいとも思っていないので、事務所のプロフィールにもこうして書いています」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

舛田 正
舛田 正(ますだ ただし)弁護士 弁護士法人北千住パブリック法律事務所
東京都八王子市出身。福島大学行政社会学部行政学科卒業。2008年司法試験合格、2010年弁護士登録、東京弁護士会。刑事弁護のほか、民事、家事、債務整理も扱う。

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