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「コ、コウノトリ!?」東京・二子玉川に見慣れない「デカい鳥」目撃相次ぐ、調べてわかった「意外な故郷」
「兵庫県立コウノトリの郷公園」のコウノトリ(そら / PIXTA)

「コ、コウノトリ!?」東京・二子玉川に見慣れない「デカい鳥」目撃相次ぐ、調べてわかった「意外な故郷」

東京・二子玉川の多摩川で8月末から、コウノトリの目撃情報が相次いでいる。

SNSでも「見慣れない鳥がいた」「デカい鳥がいた」といった投稿が注目を集め、中には「コ、コココ、コウノトリ...⁉︎」と驚く人も。

それもそのはず。コウノトリは羽を広げれば2メートルを超える大型の鳥で、国の特別天然記念物に指定されている。1971年に日本の野生個体群はいったん絶滅したが、長年にわたる保護や野生復帰の取り組みで個体数は回復。現在も環境省のレッドリストで絶滅危惧種に分類されている。 そんな珍しいコウノトリが、なぜ東京にいるのか。気になった記者は、その「正体」を追った。

●京都府舞鶴から飛来した幼鳥

SNSで投稿されている写真を頼りに、まずは昼間に現場を訪れた。

目撃されているのは、東急・二子玉川駅から少し離れた多摩川の河川敷。1羽が飛来しているようで、草が生い茂った湿地のような場所で、ミミズを捕食する姿などが目撃されているという。

しかし、残念ながらその日は見つけられなかった。その後、早朝に2回足を運んだものの、姿を見せてはくれなかった。なんとか写真に収めたいと欲が出たのが、まずかったのかもしれない。

そこでネット上の情報を調べていくと、コウノトリには足環がついており、個体番号まで特定されていることがわかった。

「J1187」

足につけられた足環から識別された個体だという。しかも今年生まれたばかりの幼鳥で、故郷は関東ではなく、京都府舞鶴市らしい。

二子玉川から400キロ以上離れている。本当にそこから飛んできたのだろうか。

●名前は「寿日」、今年5月に確認された

まず舞鶴市に問い合わせた。

舞鶴市では今年、市内の丸田地区でコウノトリが繁殖し、5月に4羽のヒナが確認された。市によると、コウノトリの飛来自体は以前から確認されていたが、市内で生まれたヒナが巣立つのは今年が初めてだという。

このうちの1羽が、メスの「J1187」だった。きょうだいたちと共に8月に巣立ちを迎えた。

4羽にはそれぞれ名前もつけられていた。「J1187」の名前は「寿日(じゅうか)」。「日光を浴びて長生き(寿)してほしい」という願いが込められているという。

ただ、「寿日が東京の多摩川にいる」という情報について尋ねると、市では把握していなかった。一方、別のきょうだいが埼玉県で目撃されており、きょうだいたちが関東まで移動していたことはわかった(この個体はその後、死亡が確認されている)。

では、「寿日」の目撃情報はどこに聞けばわかるのか。

市の担当者から教えてもらったのが、兵庫県豊岡市にある「兵庫県立コウノトリの郷公園」だった。

コウノトリの郷公園は、コウノトリの保護や野生復帰に取り組む施設で、野外にいるコウノトリの目撃情報や個体情報を収集している。さっそく問い合わせてみた。

●多摩川で6件の目撃情報、すべて「寿日」

やはり、来ていた。

コウノトリの郷公園によると、今年8月下旬から、東京都世田谷区(二子玉川付近)から寄せられたコウノトリの目撃情報は5件。

8月26日、27日、9月8日、10日、14日で、すべて「寿日」だった。

さらに8月28日には、多摩川を挟んだ対岸、神奈川県川崎市高津区二子新地付近でもその姿が確認されていた。つまり、「寿日」は多摩川周辺で少なくとも6回、目撃されていることになる。

SNSで「コウノトリがいる」と話題になっていた鳥は、本当に舞鶴市から東京までやって来ていたのだ。

実は、東京でコウノトリが目撃されるのはこれが初めてではない。世田谷区以外でも、2021年から2026年までに江戸川区、大田区、八王子市、多摩市、昭島市で計8件の目撃情報が寄せられているという。

コウノトリの郷公園の担当者は「近年、関東地方での目撃の連絡は増えています」と話す。

東京以外でも、今年8月には神奈川県伊勢原市でコウノトリ3羽が目撃された。読売新聞によると、いずれも今春、兵庫県や石川県で生まれた個体だという。

では、京都から東京まで飛んでくること自体は珍しいのだろうか。

担当者は「巣立った若鳥が餌を求めて数百キロ離れた場所まで移動することは、毎年あることなので珍しくはありません」と話す。コウノトリは1日に300キロ以上移動することもあるという。

画像タイトル 徳島県内で撮影された電柱上のコウノトリ(masa 1dx2 / PIXTA)

●一度は野生絶滅、いまや728羽に

コウノトリはかつて日本各地に生息していたが、乱獲や生息環境の変化などによって数を減らした。

コウノトリの郷公園の公式サイトなどによると、1955年に保護活動が始まり、1965年には人工飼育を開始。しかし1971年、国内に残っていた最後の野生コウノトリが死亡し、日本の野生個体群はいったん姿を消した。

保護増殖は難航したが、1985年に当時のソビエト連邦から幼鳥6羽を譲り受け、1989年に初めて飼育下での繁殖に成功。その後は「数を増やす」だけではなく、「もう一度、野外で暮らせるようにする」取り組みへと進んだ。

2005年には飼育していたコウノトリの試験放鳥がスタート。2007年には放鳥したコウノトリが野外での繁殖に成功した。人の手で数を増やす段階から、野外のコウノトリ自身が次の世代を育てる段階へと移っていった。

こうした取り組みによって、野外のコウノトリは2022年7月に300羽、2024年7月に400羽、2025年6月には500羽に到達。2026年8月31日時点では、728羽まで増えている。

そのうち、放鳥された個体などを除く「野外巣立ち等」の個体は679羽。現在では、人が放した鳥だけではなく、野外で生まれ育ったコウノトリが大部分を占めるようになった。

繁殖地も兵庫だけでなく、京都、福井、石川、鳥取、島根、徳島、栃木、茨城、新潟など全国各地に広がっている。

●見かけても近づかず「150メートル以上離れて」

結局、記者はまだ「寿日」に会えていない。

ただ、次に訪れたときに出会えるかもしれない。そこで、コウノトリを見かけた場合にどうすればよいのか、コウノトリの郷公園の担当者に聞いた。

多摩川の河川敷は、野球などに使われるグラウンドがあり、散歩やジョギングをする人も多い。珍しい鳥を見かければ、近づいて写真を撮りたくなる人もいるかもしれない。

しかし、担当者は観察するときには距離を取るよう呼びかけている。目安は「150メートル以上」。車内から観察する場合でも100メートル以上離れることが望ましいという。餌を与えないことも重要だ。

今年生まれた幼鳥の場合、人がいても逃げず、逆に近づいてくるように見えることもあるという。それでも、「そっとしておいてください」と担当者は呼びかける。

多摩川が「寿日」にとって暮らしやすい環境でありますように。その名前のとおり、日光を浴びて長生きできますように。

今度こそ「寿日」に会えるよう、また二子玉川を訪れたいと思う。(弁護士ドットコムニュース・猪谷千香)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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