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藤井四段の深夜対局「個人事業主」でOK、「子役タレント」も同じことができないの?
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藤井四段の深夜対局「個人事業主」でOK、「子役タレント」も同じことができないの?

公式戦29連勝中(6月30日現在)の史上最年少プロ棋士・藤井聡太四段は、現在中学3年生の14歳だ。時に対局は深夜に及ぶこともあるが、棋士は「個人事業主」のため、18歳未満であっても労働基準法で禁止されている午後10時〜午前5時の就労は問題にならないという。

そこで気になるのが、同じような年齢の子役タレントの労働時間だ。子役タレントには深夜出演の制限があるようだが、今後、棋士と同じように、個人事業主として、積極的に深夜に出演することはできないのか。高木啓成弁護士に聞いた。

●タレントが「労働者」か「個人事業主」かどうかは、実態で判断される

タレントが、労働基準法が適用される「労働者」に当たるのか、それとも労働基準法が適用されない「個人事業主」なのかというのは、とても難しい問題です。

「労働者」に当たるかどうかは、芸能プロダクションとタレントとの契約書が「雇用契約書」か「マネジメント契約書」かという契約書のタイトルで判断するわけではなく、その実態で判断されます。

これについては、かつて、労働省(今でいう厚生労働省)が1988年に出した、いわゆる「光GENJI通達」という有名な通達があります。その通達では、

(1)そのタレントの芸能活動が他人によって代替できないこと

(2)報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと

(3)スケジュールの関係で時間が拘束されることがあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと

(4)契約形態が「雇用契約」ではないこと

といった4つの要件を満たす場合、そのタレントは「労働者」ではないとされ、この通達により、光GENJIのメンバーは「労働者」ではないという形で扱われました。

●深夜出演を巡り、所属プロダクションが書類送検された事例も

ただし、個々のタレントが、この4要件を満たすかどうかは必ずしも明確ではなく、1999年に、売り出し中の当時15歳のタレントを深夜のラジオ放送に出演させたとして所属プロダクションと放送局の社員が労働基準法違反で書類送検されるという事件もありました。

この事件のインパクトは大きく、各芸能プロダクションや放送局は、タレントが「労働者」に該当するリスクを考慮して、15歳未満は午後9時まで、18歳未満は午後10時まで、といった形で自主規制を行っているのが現状です。

また、世の中の流れも、長時間労働やサービス残業に対してセンシティブになっており、企業は、より労働基準法を遵守することが求められています。

ですので、今後、各芸能プロダクションや放送局が自主規制を解除して子役タレントを深夜にどんどん出演させる、ということは考えにくいと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

高木 啓成
高木 啓成(たかき ひろのり)弁護士 渋谷カケル法律事務所
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。映像・音楽制作会社やメディア運営会社、デザイン事務所、芸能事務所などをクライアントとするエンターテイメント法務を扱う。音楽事務所に所属して「週末作曲家」としても活動し、アイドルへ楽曲提供を行っている。HKT48の「Just a moment」で作曲家としてメジャーデビューした。Twitterアカウント @hirock_n

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