弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 労働
  3. 休憩時間に「パチンコ」に行きたい! 制服を脱いで私服なら問題ない?
休憩時間に「パチンコ」に行きたい! 制服を脱いで私服なら問題ない?
画像はイメージです

休憩時間に「パチンコ」に行きたい! 制服を脱いで私服なら問題ない?

会社員にとって、昼の休憩時間はひとときのオアシスである。その過ごし方は多種多様で、ランチにかぎらず、自分の趣味や息抜きに時間を使いたいと考える人も多いようだ。

たとえば、インターネットのQ&Aサイトには、「休み時間の過ごし方なんですが、編み物をしてもいいと思いますか?」という質問が寄せられている。また「お昼休みの携帯での株取引は職務専念義務違反ですか?」と休憩時間に株取引を検討する人もいた。

なお、ある投稿者の会社では、昼休みにパチンコに行く人が社内で批判され、険悪な雰囲気になっていると言う。そこで、「昼休み中にプライベートな用を済ませる事はありますがどこまでが許容範囲なのでしょうか?」と質問している。

会社の休憩時間に、編み物やゲーム、パチンコなどプライベートな用事を済ませたい場合、どこまでが許されるのだろうか。半田望弁護士に聞いた。

●過去の裁判例から学ぶ「判断基準」とは

「休憩時間は労働からの解放を保障する時間であると一般に理解されていますので、原則として、労働者は休憩時間は自由に行動できます。そのため、プライベートな用事を休憩時間に行ったとしても、原則として何の問題もありません」

問題となるケースはないのだろうか。

「あらゆる行動を自由にしても良い、という訳ではありません。判例では、休憩時間内であっても、企業秩序維持のための必要かつ合理的な制約は、休憩時間にも及ぶとされています。

判例で問題となったのは、日本電信電話公社の従業員が休憩時間中にベトナム戦争反対のビラ配布をした事例です。この裁判では、『ほかの職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがある」ため、企業秩序維持のために制限することは適法と判断されました。これが一つの判断基準になるでしょう」

●編み物、ゲームは認められるの?

冒頭であげたような、編み物やゲームなどは、どうだろうか。

「前述した判例に照らすと、他の従業員の迷惑になる行為や、会社の評判を下げる行為でなければ、休憩時間に行っても問題ないと考えるべきです。

例えば、編み物やスマホでゲームをすることは、ほかの従業員の迷惑にならないと考えられ、制限してはいけないでしょう。また、買い物に行ったりお昼ご飯を食べに帰宅するなど、会社の外に出て行動することも制限されないと考えます。

パチンコについては、制服で行くなど仕事をさぼっているかのように見える場合には、企業の社会的評価を下げるおそれもありますので、制限される余地はあります。しかし、私服に着替えるなど、会社の業務時間内のサボりと間違われない配慮をしていた場合には、制限するのは行き過ぎだと思います」

●株取引は「会社のパソコン」を使うとダメ

株取引はどうだろうか。

「株取引も、私物のスマホやパソコンを使うのであれば、他の従業員の迷惑にならない行為として問題にはならないでしょう。

しかし、会社のパソコンは、あくまでも業務のために使用を認めているものですから、これを私用につかうことは、会社が私用を認めていない限り、問題になると考えます。

休憩時間は原則として自由に行動できると言っても、会社の備品はあくまで仕事のためにしか用いることができません。休憩時間に何かする場合には、私物を利用する必要があるでしょう」

なお、休憩時間の外出を禁止している会社もあるようだ。

「休憩時間は拘束を受けないことが前提ですので、休憩時間の外出禁止を定めた場合には休憩時間として認められない(労働時間として賃金支払いの対象となる)と思われます。いわゆる待機時間(手待時間)が労働時間と判断されることと同じです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

半田 望
半田 望(はんだ のぞむ)弁護士 半田法律事務所
佐賀県小城市出身。主に交通事故や労働問題などの民事事件を取り扱うほか、日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、刑事弁護・接見交通の問題に力を入れている。また、地元大学で民事訴訟法の講義を担当するなど、各種講義、講演活動も積極的におこなっている。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする