冬休みや三連休の最終日までフルに休暇を満喫し、最終日の最終便で帰宅。さあ、翌日は仕事、のはずが、よりによって最終日に大雪でーー。「すべて悪いのは、天気のせい! 欠勤ではないです」。そう開き直ってもいいのだろうか?
都内の不動産会社に勤務するマリエさん(34)の趣味は、スノーボード。「北海道のニセコや富良野に行くのが、毎年の贅沢な楽しみです。日帰りは無理な距離、ゲレンデの広さですし、最低でも2泊はしたい」という。ただ、怖いのは「大雪による欠航です。理由が遊びなので、翌日仕事に行けなかったら、これも欠勤扱いになってしまうんでしょうか」と不安を抱いている。
「飛行機が飛ばないんで、会社行けません」という場合、有給扱いで休むしかないのだろうか。また、ついうっかり乗り遅れてしまったような場合にはどうなのか。中村新弁護士に聞いた。
●「ノーワーク・ノーペイ」が原則だが・・・
原則として、労働者から労務が提供されなった場合、会社はその分の賃金を支払う必要はありません(ノーワーク・ノーペイの原則)。
会社の責任により労働者が労務を提供できなかった場合には、労働者は例外的に休業手当、もしくは賃金を受け取ることができます。しかし、本件のような悪天候は会社の責任とはいえません。
そこで、「欠勤扱いで欠勤分の賃金は支給されない」というのが原則にしたがった回答となります。
●労働者ができる「3つの手段」とは?
原則的には前述した回答となりますが、相談者の立場に立って、何ができるか検討してみます。労働者に残された手段として、例えば以下のようなものが考えられます。
(1)欠勤を有給に振り替えてもらう
(2)就業規則にこのような場合を想定した「特別休暇」の規定があれば、特別休暇扱いにしてもらう
(3)「出社可能になるまで現地で待機せよ」という命令を会社に出してもらう
ただし、「(1)欠勤を事後に有給に振り替える」ためには、会社の許可を得るか、就業規則に有給事後振替の規定があれば、その規定に即した手続を取る必要があります。悪天候で飛行機が飛ばなかったような場合は、会社の許可を得られる可能性を見込めます。
しかし、本人の過失で飛行機に乗り遅れて遅刻したような場合、有給扱いとできるかどうかは、微妙な判断になるでしょう。
(2)の特別休暇は、特別休暇の規定が就業規則にあれば、悪天候のため、遠方の出張先から帰ることができなくなったような場合には認められることが多いでしょう。しかし、私的な用事で遠方に行っていたような場合まで認められるかは、やはり微妙な判断となりそうです(就業規則の内容によりますが)。
(3)の待機命令を出してもらえば休業手当を取得できますが、これは私的な旅行のような場合には期待しがたいでしょう。
●懲戒処分を受ける可能性はあるのか?
出社不能となったため大切な仕事に穴を空けてしまった場合、懲戒処分を受ける可能性も否定はできません。
悪天候に起因して出張から帰ることができなかったような場合は、懲戒処分をおそれる必要はまずありません。また、悪天候のため私的な旅行から帰ることができなくなっても、「懲戒相当」との判断までなされる可能性は低いと思われます。
しかし、過失で飛行機に乗り遅れたような場合は、欠勤が業務に与えた影響次第では、「戒告」あるいは「訓告」など、軽い処分を受ける可能性はあります。余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。